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作業標準書を守らない作業員に、正しく守らせる3つの手法 ― 海外工場のクレーム事例から


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    2016.09.28
作業標準書を守らない作業員に、正しく守らせる3つの手法

寄稿:立川剛氏(寄稿当時)
UVC Co.,Ltd 代表。タイで現地管理者を工場管理のプロに育てる現場指導の講師。著書に『実践!管理者心得』『さらに良くなる管理術』。

本記事は、立川剛氏に2016年に寄稿いただいた記事を再編集したものです。所属・肩書きは寄稿当時のものです。

工場では、作業員が作業標準書(作業の手順や品質のポイントをまとめた書類)に従って製品を作ります。工場にある作業標準書は膨大な枚数になります。これをすべての作業員に正しく守らせることで、品質・納期・コストを満たす製品ができあがります。

ところが現場をよく見ると、作業員の実際の作業と標準書の内容が食い違っていることがあります。クレームの原因を調べていくと「作業員が標準書を守っていなかった」と分かるケースもあります。

この記事で分かること

  • 「守らない作業員が悪い」で終わらせると、対策が効かない理由
  • 作業標準書が守られなかった、2つのクレーム事例
  • 管理者が作業員に標準書を正しく守らせるための3つの手法

「守らない作業員が悪い」で終わらせていないか

作業標準書が守られていなかったと分かると、管理者は「守らない作業員が悪い」と考え、責任を作業員だけに負わせがちです。

すると対策も「標準書の教育を徹底する」「守らない作業員に注意する」といった、効き目の薄いものになってしまいます。

立川氏は、管理者にはまず「作業員に作業標準書を正しく守らせる義務がある」ことを理解させるべきだとしています。そのうえで、守らせるためのポイントを具体的に教える必要があります。

事例1:作業員が自分の判断で検査を省いていた

ある工場で、客先からのクレームが起きました。クレームになった箇所は、検査工程で全数を目で見て確かめているはずの箇所でした。

立川氏が「なぜ流出したのか」と管理者を強く問いただしても、管理者は答えられませんでした。そこで、その作業を担当した作業員に直接話を聞きました。

「標準書には目視検査を行うとあるが、本当に検査したか」と聞くと、作業員は「実は検査していなかった」と答えました。理由はこうです。

「この検査項目は2年ほど前に追加されたが、その後この不良は一度も出ていない。だから、もう検査しなくてよいと思った」

作業員は正直に話してくれました。念のため他の作業員にも確かめると、同じように「検査する必要はない」と自分で判断し、検査をしていなかったのです。

事例2:守ろうとしても守れない標準書になっていた

別の工場でも、全数目視検査の箇所で不良が流出し、クレームが起きていました。こちらでは、班長も作業員も「対象のロットは全数検査した」と強調しました。

立川氏が現場で検査の様子を観察していると、検査前の仕掛り品(工程の途中で止まっている製品)が少しずつ溜まっていきました。

そこで、検査1個あたりの標準時間と実際にかかる時間を管理者に測らせました。結果は、実測が標準時間を大きく上回っていました。

この事実を示すと、班長はこう認めました。

「検査項目が新しく追加されたが、作業時間は見直されなかった。標準書のとおりに検査していると、生産が間に合わない」

ルールはあっても、守れる状態になっていなかったのです。

2つの事例から見える「守られない」の正体

(この見出しは編集部による整理です。)

2つの事例は、どちらも「作業員が標準書を守っていなかった」という点では同じです。しかし原因は違います。事例1は、標準書の重要性が作業員に伝わっていなかったこと。事例2は、標準書そのものが時間内には守れない内容になっていたことです。

作業標準書が守られない2つの原因。事例1 重要性が伝わっておらず、作業員が自分の判断で検査を省いていた/事例2 標準書に無理があり、作業時間が見直されず時間内に検査しきれなかった

どちらも、作業員に「教育を徹底する」「注意する」だけでは解決しません。次の3つの手法は、この2つの原因の両方に手を打つものです。

3つの手法:作業員に作業標準書を正しく守らせるには

立川氏は、管理者に「標準書を正しく守らせる義務がある」と伝えたうえで、次の3つを理解させることが大切だとしています。

作業標準書を正しく守らせる3つの手法:1 管理者が自分の目で作業を観察する/2 改訂のときは守れるかを確かめる/3 守らない理由に応じて注意する

手法1:管理者が自分の目で作業を観察する

作業標準書には、作業の手順や品質のポイントがまとまっています。管理者には、これを作業員に正しく守らせる義務があります。

標準書の教育を行うのはもちろんですが、それに加えて、現場で作業を観察し、標準書どおりに作業しているかを確かめます。観察するときは、標準書と実際の作業を1項目ずつ照らし合わせることが大切です。

標準書と違う作業をしていたら、その場で作業を止め、正しい方法で作業させます。

手法2:標準書を改訂するときは、守れるかを作業員に確かめる

作業標準書を改訂するときは、作業員が守れる内容になっているかを必ず確かめます。新しい項目を足したときは特に、次の点を作業員に確認します。

  • 書いてある方法どおりに、実際に作業できるか
  • 決められた時間の中で作業できるか

班長や管理者が自分で標準書を見ながら作業してみるのも効果的です。

また、作業員の中には、標準書より良いやり方を思いついて勝手に変えてしまう人もいます。良いやり方を思いついたら必ず上司に報告し、標準書を改訂してから実行するように徹底させます。

手法3:守らない場合は、理由に応じて注意する

工場は、作業員が標準書どおりに作業することで、効率よく品質の良い製品ができるように作られています。ですから、標準書が守られていなければ、その場で注意します。

ただし、守らなかった理由によって伝え方を変えます。

  • 「最近不良が出ないから、検査しなくてよいと思った」というケースでは、標準書の重要性を説明して理解させる
  • 「面倒だったから守らなかった」という怠慢のケースでは、厳しく注意し、必ず守らせる

編集部の補足:駐在員が現場を見るときの問いかけ

(以下はbeyond global編集部による補足です。立川氏の寄稿ではありません。)

日本本社から赴任した駐在員は、現場の作業すべてに目を配ることはできません。そのときに役立つのが、立川氏が事例の中で実際に使っている問いかけです。

  • 「標準書にはこう書いてあるが、本当にこのとおりにやっているか」(事例1)
  • 「1個あたりの標準時間と実際の時間は合っているか」(事例2)
  • 「この項目を追加したとき、守れるかを誰が確かめたか」(手法2)

どれも、作業員を責める問いではなく、事実を確かめる問いです。答えが返ってこなければ、そこに見落としがあると分かります。現地の管理者に「こう聞いてみてほしい」と渡すこともできます。

まとめ

  • 「守らない作業員が悪い」で終わらせると、対策が効かない
  • 標準書が守られない原因は、「重要性が伝わっていない」場合と「標準書そのものに無理がある」場合がある
  • 手法1:管理者が標準書と実際の作業を1項目ずつ照らし合わせる
  • 手法2:改訂のときは、方法どおり・時間内にできるかを作業員に確かめる
  • 手法3:守らない理由に応じて、説明するか厳しく注意するかを分ける

よくある質問

Q1. 作業標準書の教育はしているのに、守られません。

教育だけでは足りないことがあります。立川氏の手法では、管理者が現場で作業を観察し、標準書と実際の作業を1項目ずつ照らし合わせます。あわせて、標準書が決められた時間内で守れる内容になっているかも確かめてください(事例2)。

Q2. 作業員が標準書より良いやり方を見つけた場合は、どうすればよいですか。

良いやり方そのものは歓迎してかまいません。ただし勝手に変えるのではなく、まず上司に報告し、標準書を改訂してから実行するルールにします。標準書と実際の作業がずれたままになるのを防ぐためです。

Q3. どこまで厳しく注意すべきですか。

守らなかった理由で分けます。「不良が出ないから不要だと思った」という判断の誤りには、標準書の重要性を説明します。「面倒だった」という怠慢には、厳しく注意して必ず守らせます。

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beyond global は、日本・シンガポール・タイの拠点から、海外拠点の現地人材の育成と、リーダー・管理職を育てる階層別研修を支援しています。「決めたルールや手順が、現場で守られない」「現地の管理者が、現場の作業まで目を配れていない」といったお悩みがあれば、無料個別面談でお気軽にご相談ください。

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執筆者

森田 英一
beyond global group
President & CEO
森田 英一

大阪大学大学院 基礎工学研究科卒業。大学時代に、国際交流サークルを立ち上げる。大学院時代にアメリカとイギリスで海外でのインターンシップを経験。大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)にて人・組織のコンサルティングに従事。 2000年にシェイク社を創業し、代表取締役社長に就任。若手の主体性を引き出す研修や、部下のリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発のファシリテーションに定評がある。10年の社長を経て、現在は、beyond globalグループのPresident & CEOとして、グローバル人材育成事業、日本企業のグローバル化支援、組織開発、ナショナルスタッフの人財開発、東南アジアの社会起業家とソーシャルイノベーション事業等、各種プロジェクトを行っている。株式会社シェイク 創業社長・現フェロー。 著作に「どうせ変わらないと多くの社員が諦めている会社を変える組織開発」(PHPビジネス新書)「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「自律力を磨け」(マガジンハウス)「こんなに働いているのに、なぜ会社は良くならないのか?」(PHP出版)「3年目社員が辞める会社 辞めない会社」(東洋経済新報社)等がある。