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海外工場で作業員の品質意識を高める3つの手法 ―「扱いが雑」「不良を隠す」現場の事例から


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    2016.11.09
海外工場で作業員の品質意識を高める3つの手法

寄稿:立川剛氏(寄稿当時)
UVC Co.,Ltd 代表。タイで現地管理者を工場管理のプロに育てる現場指導の講師。著書に『実践!管理者心得』『さらに良くなる管理術』。

本記事は、立川剛氏に2016年に寄稿いただいた記事を再編集したものです。所属・肩書きは寄稿当時のものです。

海外工場を訪ねると、作業員が製品を雑に扱っている場面に出会うことがあります。手で製品を持ち上げる、箱に入れる。そうした一つひとつの動作でも、「傷をつけないように」と意識しているかどうかで扱い方は大きく変わります。

製品は多くの作業員の手を経てできあがります。一人ひとりの品質意識が、そのまま製品の品質になるということです。

この記事で分かること

  • 海外工場で品質意識の低さが表に出る、2つの典型的な場面
  • 管理者が作業員の品質意識を高めるための3つの手法
  • 人の入れ替わりが激しい現場で、品質教育を続けるための考え方

品質意識の教育を「一度きり」にできない理由

海外の工場では、作業員の入れ替わりが激しいのがふつうです。いつの時点でも、一定の割合で新人が働いています。

そのため、品質意識の教育は一度やれば終わり、とはいきません。管理者は、作業員の品質意識を常に高め続ける必要があります。

ここからは立川氏が指導した工場の事例を2つ紹介し、そのあとで3つの手法を解説します。

事例1:製品の扱いが荒く、傷の不良が増えていた

ある工場で、傷による不良が増えていました。立川氏が管理者に原因を尋ねると、「いろいろ考えてみたが、原因が分からず困っている」という答えでした。

そこで管理者と一緒に現場に入り、作業の様子を観察しました。目についたのは、どの作業員も製品の扱いが荒いことでした。

立川氏は管理者に次のように問いかけました。

  • 作業員はあの持ち方をしているが、それは正しい持ち方なのか
  • 製品を箱に入れるときもかなり雑だが、製品は傷まないのか
  • あのように雑に扱えば、製品同士がぶつかって傷になるのではないか

すると管理者は、「作業員には製品を大事に扱うよう説明しているが、なかなか理解してくれない」と言い訳を始めました。

事例2:不良品を記録せずに捨てていた

別の工場では、生産した数が合わない問題が起きていました。管理者の説明はこうです。

「1,000個分の材料を投入したが、完成品は980個。工程内の不良は15個なので、5個足りない」

立川氏が「作業員が不良の数をごまかしている可能性は考えたか」と聞くと、管理者は「そんなことはしないはずだ」と答えました。

立川氏はこう伝えました。作業員を疑えと言っているのではない。可能性としてあり得るなら、管理者はすべての可能性を検討すべきだ、と。

そのうえで徹底的に調べさせると、原因が分かりました。ある作業員が作業方法を間違えて不良品を作り、上司に怒られるのが怖くて、記録をつけずに処分していたのです。

3つの手法:管理者が作業員の品質意識を高めるには

製品の扱いが荒い。不良品を記録せず、勝手に処分してしまう。こうした問題の原因の一つは、作業員の品質意識の低さです。

品質意識の低さが表に出る2つの場面。事例1 製品の扱いが荒く、傷の不良が増えていた/事例2 怒られるのが怖くて不良品を記録せずに処分し、完成品の数が合わなかった

立川氏は、このような問題が起きている工場では、まず管理者に「作業員の品質意識を高める責任は管理者にある」と伝えるべきだとしています。そのうえで、次の3つを正しく理解させます。

作業員の品質意識を高める3つの手法:1 品質の大切さを身近な話で伝える/2 一度で終わらせず繰り返し説明する/3 ルール違反はその場で注意する

手法1:品質の重要性を、作業員の身近な話として伝える

品質意識を高めるには、まず「なぜ品質が大事なのか」を理解してもらう必要があります。立川氏が効果的だとするのは、作業員の暮らしや仕事に結びつけた説明です。

一つは、「品質は自分たちの生活を安定させる」という話です。品質の悪い製品を出せば、お客様の信用を失い、注文が減ることがあります。会社の利益が出なくなれば、働く人の生活も不安定になります。反対に、品質の良い製品を作り続ければ、お客様の信用を得て製品が売れ続け、生活も安定します。

もう一つは、「品質が悪いと自分たちの仕事が増える」という話です。不良品が客先に届いてクレームになると、全数の再検査や修理が必要になります。再発防止のために作業工程が増えることもあります。

手法2:一度ではなく、繰り返し説明する

品質の大切さは、一度説明しただけでは伝わりません。朝礼などで続けて話すのはもちろん、不良やクレームが起きたときには必ず、品質の重要性をあらためて説明します。

立川氏は、上司が熱心に説明を繰り返す姿を見て、作業員は品質の重要性を理解するようになる、と述べています。

手法3:品質ルールを守らない作業員には、その場で注意する

良い品質の製品を作るには、品質ルールを守ることが欠かせません。管理者は、作業員がルールを守っていない場面を見つけたら、その場で注意します。

注意しなければ、作業員は「品質ルールは守らなくてもよいのだ」と受け取り、品質意識が下がってしまうからです。作業員の品質意識を高める責任は管理者にあります。見つけたら必ずその場で注意する、を徹底します。

編集部の補足:手法2と手法3を両立させるために

(以下はbeyond global編集部による補足です。立川氏の寄稿ではありません。)

事例2で、作業員が不良品を隠した理由は「怒られるのが怖かった」でした。手法3の「その場で注意する」と組み合わせるときは、この点に気をつける必要があります。

注意の対象は「ルールを守らなかったこと」です。「不良を出したこと」を責めると、事例2のように不良が報告されなくなるおそれがあります。不良を正直に報告したことは、むしろ認める。そのうえで、ルール違反には一貫して注意する。この線引きを、管理者自身が言葉にして作業員に伝えておくと、現場で迷いが減ります。

また、手法1の説明を毎回同じ管理者が同じ言葉でするより、事例1・2のように「この工場で実際に起きたこと」を材料にすると、作業員にとって身近な話になりやすくなります。

まとめ

  • 海外工場では作業員の入れ替わりが激しく、品質意識の教育は続ける前提で考える
  • 「扱いが雑」「不良を記録せずに処分する」は、品質意識の低さが表に出た典型的な場面
  • 作業員の品質意識を高める責任は管理者にある
  • 手法は3つ。品質の大切さを作業員の生活と仕事に結びつけて伝える。繰り返し説明する。ルール違反はその場で注意する

よくある質問

Q1. 品質の大切さを何度説明しても、作業員の行動が変わりません。

立川氏の手法では、説明は一度で終わらせず、朝礼で続けて話し、不良やクレームが起きるたびに説明します。あわせて、ルール違反をその場で注意しているかも確かめてください。説明はしていても、違反を見逃していれば「守らなくてよい」と伝わってしまいます。

Q2. 不良品の数が合わないとき、作業員を疑うのは失礼ではありませんか。

疑うことが目的ではありません。事例2のように、管理者はすべての可能性を検討する立場にあります。調べた結果、原因が「怒られるのが怖くて隠した」だと分かれば、不良を報告しやすくする手を打てます。

Q3. 入れ替わりが激しく、教えてもすぐ辞めてしまいます。

入れ替わりが激しい現場ほど、品質意識の教育は一度で終わるものではなく、続ける仕組みとして考えます。朝礼での説明や、不良が出たときの説明を習慣にしておけば、新しく入った作業員にも同じ話が届きます。

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beyond global は、日本・シンガポール・タイの拠点から、海外拠点の現地人材の育成と、リーダー・管理職を育てる階層別研修を支援しています。「品質の大切さを何度伝えても、現場の行動が変わらない」「現地の管理者が、作業員に注意や指導をしきれていない」といったお悩みがあれば、無料個別面談でお気軽にご相談ください。

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執筆者

森田 英一
beyond global group
President & CEO
森田 英一

大阪大学大学院 基礎工学研究科卒業。大学時代に、国際交流サークルを立ち上げる。大学院時代にアメリカとイギリスで海外でのインターンシップを経験。大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)にて人・組織のコンサルティングに従事。 2000年にシェイク社を創業し、代表取締役社長に就任。若手の主体性を引き出す研修や、部下のリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発のファシリテーションに定評がある。10年の社長を経て、現在は、beyond globalグループのPresident & CEOとして、グローバル人材育成事業、日本企業のグローバル化支援、組織開発、ナショナルスタッフの人財開発、東南アジアの社会起業家とソーシャルイノベーション事業等、各種プロジェクトを行っている。株式会社シェイク 創業社長・現フェロー。 著作に「どうせ変わらないと多くの社員が諦めている会社を変える組織開発」(PHPビジネス新書)「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「自律力を磨け」(マガジンハウス)「こんなに働いているのに、なぜ会社は良くならないのか?」(PHP出版)「3年目社員が辞める会社 辞めない会社」(東洋経済新報社)等がある。