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グローバルリーダーとは? ― 日本企業が育てるべき4つのタイプと、育成の進め方・事例


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    2026.10.17
グローバルリーダーとは?

「夢がない」と言っていた日本人学生をシンガポールへ送り出したことがあります。自信のない子をベトナムへ送ると、現地で人気者になり「夢ができました」と目を輝かせて帰ってきました。自信満々だった子は、シンガポールで上には上がいることを知り「強い危機感を覚えた」と言って、積極的に行動するようになりました。インドに行くのをずっと躊躇っていたけれど、思い切ってインドで3週間過ごした人は「世界中どこでも生きていけます」と話していました。越境すると、人は3週間で変わります。

企業の若手・中堅を海外派遣研修に送り出すときも同じです。出発前は「英語ができないから無理」と言っていた人が、帰国後に自ら海外の仕事へ手を挙げる。そんな場面を、これまで数多く見てきました。

「グローバル人材を育てたい」という相談は、今も絶えません。ところが中身を聞くと、会社ごとに思い描く人物像がまるで違います。ある会社は「タイの工場で品質を守れる人」、別の会社は「欧州で新しい事業を立ち上げられる人」を指していました。言葉が同じでも、必要な力も育て方も別物です。

この記事では、次のことが分かります。

  • グローバルリーダーとは何か(結論を先に示します)
  • 政府の定義と、企業が実際に求める人物像の違い
  • 日本企業で海外に関わる人材の4つのタイプと、それぞれに必要な力
  • タイプ別の確保・育成の方法と、越境体験を使った育成事例
  • 自社流の「グローバル人材の定義」をつくる手順

グローバルリーダーとは:結論から

グローバルリーダーとは、国籍・言語・価値観の違う人とチームを組み、日本の外でも成果を出し、その違いから新しい価値を生み出せるリーダーのことです。

ポイントは3つあります。

  1. 場所を問わず成果を出す:日本と同じやり方が通じない環境でも、事業の結果を出せる
  2. 違う人を巻き込む:日本人以外のメンバーや取引先から信頼され、動いてもらえる
  3. 違いを価値に変える:違う考え方をぶつけ合い、一人では出せない答えを生み出せる

「グローバル人材」が海外で働ける人全般を指すのに対し、「グローバルリーダー」は、そのうち人を率いて成果と変化を生み出す役割の人を指します。駐在員として現地法人を任される人、多国籍チームのプロジェクトを率いる人が、その代表です。

グローバルリーダーに求められる3つのポイント:①場所を問わず成果を出す、②違う人を巻き込む、③違いを価値に変える

「グローバル人材」は日本で生まれた言葉

「グローバル人材」を英語に直訳しても、海外ではあまり通じません。日本で広まった言い方だからです。日本では多くの場合、「日本以外の国で活躍できる人」という意味で使われてきました。

本来の「グローバル」は「地球規模」という意味です。厳密には「世界のどこでも価値を出せる人」を指すはずです。ただ日本企業では、アジアのどこか1か国で成果を出せば「グローバル人材」と呼ばれがちです。アジアで成果を出した人が、欧州でも同じように成果を出せるとは限りません。言葉のあいまいさが、育成の的を外す原因になっています。

政府はどう定義してきたか

国もこの言葉を定義してきました。代表的なものを2つ挙げます。

  • 経済産業省・文部科学省「産学人材育成パートナーシップ グローバル人材育成委員会 報告書」(2010年):多様な背景を持つ相手に自分の考えを分かりやすく伝え、文化や価値観の違いを乗り越えて互いを理解し、違いから強みを引き出して新しい価値を生み出せる人材、という趣旨で定義しています。
  • 政府「グローバル人材育成推進会議 中間まとめ」(2011年):グローバル人材の要素を3つに整理しています。
  • 要素Ⅰ:語学力・コミュニケーション能力
  • 要素Ⅱ:主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感
  • 要素Ⅲ:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー

どちらも「違いを乗り越え、新しい価値をつくる」点を重視しています。一方で、企業が採用や育成にそのまま使えるほど具体的ではありません。だからこそ、自社の事業に合わせて定義し直す必要があります。

世界の企業が求めるのは「違いからイノベーションを起こす人」

日本で「グローバル人材」というと、海外拠点で現地社員を束ねる日本人を思い浮かべる人が多いでしょう。国籍を超えて事業を展開する企業では、求める人物像がもう一段先にあります。

  • 国という枠を超え、世界全体での最適を考えて動ける人
  • 世界のニーズにいち早く気づき、新しいものを生み出せる人
  • 国籍や人種の壁を越えて、知恵を掛け合わせられる人

つまり「世界を舞台にイノベーションを起こす人」です。

「良いものを作れば売れる」という成功体験

日本企業がここでつまずく理由の一つは、戦後の大きな成功体験です。品質の良い製品を作れば、世界でも売れる。数十年前はそれで勝てました。

今は事情が違います。中国、インド、東南アジアの企業が品質で追いつき、価格でも競ってきます。新興国で生まれたアイデアが先進国に逆流する「リバース・イノベーション」も、珍しい話ではなくなりました。製品の力だけで勝ち続けるのは難しくなっています。

机の上ではなく、現地で学ぶ

世界の企業や教育機関は、この変化に合わせて学び方を変えてきました。2010年代には、ハーバード・ビジネス・スクールが1年生全員を新興国でのフィールド・プロジェクトに送り出し、話題になりました。IBMも、社員チームを新興国に派遣して社会課題に取り組ませる研修を行ってきました。

私自身も、インドネシアで印象に残る話を聞いたことがあります。インドネシアでは、政府や企業の経営陣が数か月間、普段の仕事を離れて世界各国の社会問題に取り組みます。驚いた私が「それほど長く仕事を離れて問題はないのですか」と尋ねると、政府高官の方はこう答えました。「リーダーの仕事は、これからの社会を予見し、よりよい社会をつくるために国の進むべき方向を見極めること。だから、世界の社会問題を知ることは、何をおいてもするべき重要な仕事なのです」。

過去の事例を教室で分析するだけでは、新興国の現実は分かりません。現地の人と同じ課題に向き合い、肌で感じる。その体験が、新しいビジネスの種を見つける力になります。

日本企業が求めるグローバル人材は4つのタイプ

海外で活躍する人材を、一つの言葉でくくると育成がぼやけます。日本企業の場合、大きく2系統・4タイプに分けると整理しやすくなります。

日本企業が求めるグローバル人材の4タイプ:日本のやり方を海外に持っていく人(①日系オペレーション型、②日系協働型)と、現地の企業や人と組み新しいやり方をつくる人(③市場開拓型、④新事業創出型)
タイプ主な場面特に必要な力
①日系オペレーション型海外工場などで、日本の品質・やり方を現地社員に根付かせる分かりやすく教える力、根気、徹底力、最低限の語学力
②日系協働型海外に進出した日系の取引先と一緒に事業を進める日本人同士の人脈、日本に関心のある現地社員との意思疎通、語学力
③市場開拓型日本で成功した商品・サービスを現地市場に広げる現地人材との人脈と信頼構築、交渉力、協働する力、一定以上の語学力
④新事業創出型現地のニーズから、まったく新しい事業を生み出すニーズをつかむ力、多様性を受け入れる力、共創(コ・クリエーション)の力

①②は「日本のやり方を海外に持っていく人」です。日本の仕事を熟知していること、現地の人から尊敬される専門性があることが土台になります。

③④は「現地の企業や人と組み、新しいやり方をつくる人」です。こちらは次の力が欠かせません。

  • 主体的に動くリーダーシップ:自分で仮説を立てて動き、検証しながら直し、周りを巻き込み続ける
  • 異文化に適応する力:違う価値観を受け止めたうえで、物事を前に進める
  • 価値をつくる力:自分と違う強みを持つ人と組み、これまでの常識にない答えを出す
  • 影響を与えられる語学力:日本企業に関心のない相手も動かせるレベル
  • 内省する力:自分の常識を疑い、自分を客観的に見つめる力(セルフ・アウェアネス)

冒頭で定義した「グローバルリーダー」は、主に③④の人材、そして①②のチームを率いる立場の人を指します。

タイプ別の確保・育成の方法

①日系オペレーション型:まとめて選び、継続して鍛える

現地の人から尊敬されるだけの技術や経験を持つ人を候補にします。その中から、教えることが得意で面倒見のよい人を選びます。語学と異文化マネジメントは、赴任前から継続して鍛えます。

このタイプは、海外で働くことを考えたこともない人が多い層です。何人かまとめて育成すると、赴任後も同期同士で支え合えます。

②日系協働型:社内の「人脈づくりの上手な人」を送る

交渉相手の中心が日本人なら、仕事の進め方は国内に近くなります。国内で人間関係を築くのが上手な人に、出張や赴任を打診するのが近道です。生活面の不安さえ取り除けば、早く成果が出やすいタイプです。

ただし取引先の現地化が進み、現地社員とのやり取りが中心になれば、語学力の強化が必要です。日本語を話せる現地社員とペアを組む方法もあります。

③市場開拓型:現地の国籍の人を日本で育てる道も

時間をかけられるなら、展開先の国籍の社員を日本で採用・育成し、のちに現地へ送る方法が効果的です。ただし離職のリスクはあります。入社時にキャリアの道筋を話し合い、合意しておくことが前提です。

日本人を育てる場合は、語学だけでは足りません。日本で事業を伸ばす力と、海外でゼロから形にする力は別物です。ゼロから立ち上げるタフさ、日本のやり方にとらわれない柔軟さが要ります。短期の海外派遣で「修羅場」を経験させ、異文化の人と短期間で信頼を築く訓練をすると効果的です。

④新事業創出型:国籍にこだわらず、まず中心人物を確保する

もっとも難しい領域です。日本人にこだわらない方がよいでしょう。世界中、あるいは現地の候補者から、似た経験を持つ中心人物を確保することが先決です。そのうえで、その人を軸にチームを組みます。

日本人の候補者は、その中心人物と一緒に働き、現場で育てます。戦略づくり、財務、異文化マネジメントなどの研修は、現場で必要になったタイミングで提供すると身に付きやすくなります。

育成事例:越境体験で人はどう変わるか

beyond global は、日本の社員を海外に送り、現地の人と混成チームを組んで実際の課題に取り組む研修を続けてきました。旧社名ドアーズ時代の「海外修羅場プログラム」は、「HRアワード2013」(主催:日本の人事部、後援:厚生労働省)の教育・研修部門で最優秀賞を受けています。

設計で大事にしていることは3つあります。

  1. 視察で終わらせない:観光型の見学ではなく、現地の人と本気でチームを組み、社会課題やビジネス課題に取り組んで、必ず成果物を出す
  2. アジアから始める:いきなり英語圏に送ると、言葉の壁で自信をなくしやすい。まずアジアで「やれた」という手応えをつかむ
  3. 思い込みが外れる瞬間をつくる:「こうでなければならない」という前提が崩れる体験が、行動を変える

海外で働くうえでの一番の壁は、語学力より「自信と経験の不足」です。翻訳ツールが進んだ今、言葉の壁は以前より低くなりました。食わず嫌いのまま手を挙げない人が、実は一番多いのです。

2026年6月にも、ある企業の若手16名をフィリピンへ4週間送り出しました。最初は「英語が苦手」「自信がない」と話していた参加者が、終わる頃には「海外に行ってもいい」と口にするようになります。

自社流の「グローバル人材の定義」をつくる3ステップ

あいまいな言葉のまま育成を始めると、研修を重ねても成果につながりません。次の3ステップで、自社の定義を具体にします。

自社流のグローバル人材の定義をつくる3ステップ:①タイプを決める、②場面を書き出す、③必要な力と育て方を決める
  1. タイプを決める:自社の海外事業に必要なのは、4タイプのどれか。複数なら、それぞれ何人必要か
  2. 場面を書き出す:どの国で、どんな相手と、どんな成果を出す仕事なのか。具体的な場面まで落とす
  3. 必要な力と育て方を決める:場面から逆算して、身に付けるべき力を決め、研修・配置・派遣を組み合わせる

ここまで決まると、採用計画と育成計画が立てやすくなります。人材はすぐには育ちません。数年先の海外展開に備えて、今から候補者の「人材プール」をつくっておくことが大切です。

世界での競争力は「事業戦略×組織・人材戦略」で決まる

製品やサービスが際立っていた時代は、それだけで世界で勝てました。今は、新興国の企業が品質でもコストでも迫っています。

世界での競争力 = 商品・サービス戦略 × 組織・人材戦略

掛け算なので、どちらかが弱ければ全体が伸びません。日本企業がこれまで後回しにしてきた「グローバル人材の確保・育成」を、経営戦略の一部として計画的に進める時期に来ています。

まとめ

  • グローバルリーダーとは、国籍・価値観の違う人と組み、日本の外でも成果を出し、違いから新しい価値を生み出せるリーダー
  • 「グローバル人材」は日本独特のあいまいな言葉。政府の定義も、そのままでは育成に使えない
  • 日本企業で海外に関わる人材は、日系オペレーション型・日系協働型・市場開拓型・新事業創出型の4タイプに分けると育て方が見える
  • 育成の壁は語学より「自信と経験の不足」。越境体験で思い込みを外すことが効く
  • 自社の定義を「タイプ→場面→必要な力」の順に具体にし、人材プールを今からつくる

よくある質問

Q1. グローバル人材とグローバルリーダーは何が違いますか? グローバル人材は、日本の外や多国籍の環境で働ける人全般を指すことが多い言葉です。グローバルリーダーは、その中でも多様なメンバーを率いて成果と変化を生み出す役割の人を指します。駐在員として現地法人を任される人や、多国籍プロジェクトの責任者が代表例です。

Q2. 語学力が低い社員でも、グローバルリーダーに育ちますか? 育ちます。海外で働くうえでの大きな壁は、語学力より自信と経験の不足です。まずアジアなどで現地の人と課題に取り組み、「やれた」という手応えをつかむと、語学を学ぶ意欲も上がります。ただし市場開拓型・新事業創出型では、相手を動かせる語学力が最終的に必要になります。

Q3. 育成はどこから始めればよいですか? まず「自社に必要なのは4タイプのどれか」を決めることです。タイプが決まれば、必要な力、候補者の選び方、研修と派遣の組み合わせが決まります。いきなり研修を選ぶより、定義から始める方が遠回りに見えて近道です。

相談の案内

beyond global は、日本とシンガポール、タイを拠点に、日本企業のグローバルリーダー育成を支援しています。海外派遣研修、駐在員研修、次世代リーダー育成プログラムを、貴社の「必要なタイプ」に合わせて設計します。

「自社に必要なグローバル人材の姿をはっきりさせたい」「海外派遣研修を検討している」という段階からご相談いただけます。無料個別面談で、課題の整理と他社事例のご紹介を行います。

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執筆者

森田 英一
beyond global group
President & CEO
森田 英一

大阪大学大学院 基礎工学研究科卒業。大学時代に、国際交流サークルを立ち上げる。大学院時代にアメリカとイギリスで海外でのインターンシップを経験。大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)にて人・組織のコンサルティングに従事。 2000年にシェイク社を創業し、代表取締役社長に就任。若手の主体性を引き出す研修や、部下のリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発のファシリテーションに定評がある。10年の社長を経て、現在は、beyond globalグループのPresident & CEOとして、グローバル人材育成事業、日本企業のグローバル化支援、組織開発、ナショナルスタッフの人財開発、東南アジアの社会起業家とソーシャルイノベーション事業等、各種プロジェクトを行っている。株式会社シェイク 創業社長・現フェロー。 著作に「どうせ変わらないと多くの社員が諦めている会社を変える組織開発」(PHPビジネス新書)「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「自律力を磨け」(マガジンハウス)「こんなに働いているのに、なぜ会社は良くならないのか?」(PHP出版)「3年目社員が辞める会社 辞めない会社」(東洋経済新報社)等がある。