タイのエンゲージメントサーベイで常に上位に挙がる不満項目が「報酬」です。「月給が低い」「昇給が少ない」「ボーナスがわからない」といった声は、企業規模にかかわらず幅広く見られます。
ただし、こうした声の背景にあるのは、単なる“金額の不満”ではなく、「報酬の決まり方が不透明で納得できない」という構造的課題です。
本記事では、報酬制度に対する誤解や不満の本質を掘り下げ、再設計に必要な視点を考察します。
報酬不満の本質は「仕組みの不透明さ」
多くの社員が感じている報酬への不満は、実は金額そのものよりも、制度や運用の「わかりにくさ」に起因しています。
たとえば、次のような声が典型です:
- なぜ自分の昇給額がこの金額なのかがわからない
- ボーナスが何を基準に決まっているのか説明がない
- 自分の給与水準が高いのか低いのか判断できない
こうした状況は、「制度はあるが運用されていない」「説明されていない」ことで、“納得感”が得られず、結果として不信感へとつながってしまいます。
金額よりも、「根拠のある説明」を
人は必ずしも“高額な報酬”でなければ満足するわけではありません。むしろ、納得できる根拠と将来の見通しがあることが、満足度や信頼を大きく左右します。
具体的には次の3点が重要です:
- 自分の成果や成長がどのように評価されたのか
- その評価がどのように報酬に反映されたのか
- 今後、どのような努力をすれば昇給・昇格につながるのか
こうした情報が丁寧に共有されることで、社員の中に「報われている」という感覚と、「未来への安心感」が生まれます。
「制度の整備」ではなく、「制度の翻訳」が必要
報酬制度は、設計して終わりではなく、現場で理解され、活用されてはじめて機能します。
そのために必要なのは、制度の“翻訳”です:
- 昇給やボーナスの決まり方を具体的に説明する
- 評価フィードバックと報酬のつながりを可視化する
- 上司が制度の背景や意図を、自分の言葉で語れるようにする
制度そのものの出来栄えよりも、説明責任を果たせるマネジャーの存在が、社員の信頼と納得を大きく左右するのです。
まとめ:報酬は「構造と運用」で納得をつくる
- 金額の大小よりも、「どう決まったか」の納得感が重要
- 報酬制度は、貢献と未来の可視化によって機能する
- マネジャーが制度を“伝える力”を持つことが、リテンション強化のカギとなる
報酬制度は、単なるコスト管理ツールではなく、社員へのメッセージツールでもあります。
「あなたの成長をきちんと見ている」「期待している」というメッセージを、制度の構造と日々の運用の中で、いかに伝えていけるかが問われています。
【次ページ】第4回:納得感のない評価が成長を止める
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執筆者
beyond global group
President & CEO
森田 英一
大阪大学大学院 基礎工学研究科卒業。大学時代に、国際交流サークルを立ち上げる。大学院時代にアメリカとイギリスで海外でのインターンシップを経験。大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)にて人・組織のコンサルティングに従事。 2000年にシェイク社を創業し、代表取締役社長に就任。若手の主体性を引き出す研修や、部下のリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発のファシリテーションに定評がある。10年の社長を経て、現在は、beyond globalグループのPresident & CEOとして、グローバル人材育成事業、日本企業のグローバル化支援、組織開発、ナショナルスタッフの人財開発、東南アジアの社会起業家とソーシャルイノベーション事業等、各種プロジェクトを行っている。株式会社シェイク 創業社長・現フェロー。 著作に「どうせ変わらないと多くの社員が諦めている会社を変える組織開発」(PHPビジネス新書)「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「自律力を磨け」(マガジンハウス)「こんなに働いているのに、なぜ会社は良くならないのか?」(PHP出版)「3年目社員が辞める会社 辞めない会社」(東洋経済新報社)等がある。