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JTの「グローバル人事」に学ぶ 日本企業のグローバル化と人事戦略の事例


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    2017.01.27
JTのグローバル人事に学ぶ 日本企業のグローバル化と人事戦略の事例

本対談は2016年末〜2017年初めに実施したものです。所属・肩書き・数字は当時のものです。

嶋吉耕史氏
日本たばこ産業株式会社(JT)執行役員(人事担当)。新卒でJTに入社し、エンジニアを経てイギリスのたばこ会社で生産管理を担当。帰国後、R.J.レイノルズの海外たばこ事業の買収に伴う統合プロセスに携わる。

森田英一
beyond global グループ President & CEO。

この対談について

JT 嶋吉耕史氏(当時)と森田英一の対談の様子

JTは国内の人口減少を見越して、早くから多角化とグローバル化を進めてきた会社です。対談当時、売上の約6割が海外事業で、社員の約6割が海外で働いていました。

日本国内の事業に責任を持つ日本の本社と並んで、海外事業を束ねる世界本社が、スイス・ジュネーブのJT International(以下、JTI)です。

日本企業の中でグローバル化を一歩も二歩も先に進めてきたJTで、人事担当の役員を務める嶋吉氏に、森田が話を聞きました。

この対談の要点3つ

  1. 本社の場所より、手放さないものを決める。 本社は専門家が集まる場所で選び、海外へは「品質」「人材育成」「4Sモデル」を持ち込みました。
  2. 駐在員は、現地の上司が選ぶ。 給与を現地が持つFAでは、受け入れ側が断れます。
  3. 目的はグローバル人材ではなく「本物の経営者」。 経営者候補には全員にグローバルビジネスを経験させます。
この対談の要点3つ。1 本社の場所より手放さないものを決める、2 駐在員は現地の上司が選ぶ、3 目的はグローバル人材ではなく本物の経営者

1. イギリスの工場で見た「在庫10か月分」

JT 嶋吉耕史氏(当時)と森田英一の対談の様子

「イギリス人はいざとなると底力がある、大したものだと感心しました。」(嶋吉氏)

森田:多くの日本企業でグローバル化が経営課題になっています。ただ、人と組織のグローバル化では、日本企業は欧米より20年ほど遅れています。一方でJTは早くからM&Aを進め、JTIが海外事業を担う体制を築きました。成功の秘訣を伺いたいと思います。

嶋吉さんは新卒で入社し、エンジニアを経て、JTが買収したイギリスのたばこ会社(JTIの母体を買収する前に取得した小規模なメーカー)に出向されたのでしたね。

嶋吉:イギリスで工場の生産管理を3年間やりました。サプライチェーンマネジメントがもてはやされた時代で、日本は非常にきめ細かな生産管理をしていました。

私から見ると、イギリスの工場は生産管理をしていないも同然でした。倉庫には在庫が10か月分もありました。当時の日本では、出荷から小売店までが平均3週間ほどでしたから驚きました。需要の予測に合わせてつくる量を調整する発想がなく、工場はつくりたいだけつくり、売れなければ販売の責任、という感じでした。

森田:なるほど。

嶋吉:販売の現地社員に需要予測を出すよう言いましたが、「販売数はぶれるので在庫は多いほうがいい」と、まったく聞きません。つい声を荒げたら「嶋吉はジェントルマンではない」と噂が広がり、信頼の回復が大変でした。最後まで納得させられなかったのには理由があって、その工場は過剰な生産能力で設計されていて、注文がなく暇だったのです。

そこで本社に「もっと注文をください」と頼んだら、今度はさばききれないほどの注文が来ました。最初は週末も工場を動かしてこなしましたが、その結果、機械の効率も品質もぐんと上がり、週末の稼働も要らなくなりました。イギリス人はいざとなると底力がある、大したものだと感心しました。

▶ 日本企業へのヒント
現地が動かないときは、まず現場の仕組みに理由がないかを確かめてみてください。

2. 世界本社は日本に置くべきか

「「べき論」は思考を停止させるからです。」(嶋吉氏)

森田:東南アジアの日系の現地法人では、現地社員は定時に帰り、日本人駐在員だけが遅くまで残っていることが少なくありません。「最後は日本人が何とかしてくれる」と思われ、現地社員の能力も責任感も育たない。JTがうまくいっているのは、日本と中国以外の世界のビジネスを、ジュネーブのJTIが運営している点も大きいと思います。どんな考えでこの体制にしたのですか。

嶋吉:最初から明確な方針があったわけではないと思います。その時々の合理的な判断を積み重ねた結果ではないでしょうか。

本社をどこに置くかは、結局、本社機能に必要なインフラがそこにあるかどうかです。日本企業の本社が東京に多いのは、パートナー企業や外部のアドバイザーなど関係者が集まっているからです。では、グローバルなビジネスのためのインフラが東京にあるか。たとえば東京には、イギリスの税制に詳しい会計士や弁護士はほとんどいません。シンガポールと比べると、東京はグローバル本社を置くにはインフラが貧弱です。

森田:なるほど。

嶋吉:インドネシアでビジネスをするとき、インドネシアに詳しい専門家は東京よりシンガポールのほうがすぐ見つかるでしょう。外資系企業が地域の本部を東京ではなく香港やシンガポールに置くのはそのためです。

森田:ただ、世界本社を日本の外に置く話を日本企業にすると、「日本企業の本社は日本に置くべきだ」「アイデンティティが失われる」という意見が出ます。

嶋吉:私は「日本企業はこうすべき」という「べき論」が嫌いなんです。べき論は思考を止めるからです。経営で重要なのは合理的な判断です。日本企業だから日本にいなければならない合理的な理由はありません。世界を相手にするなら、不合理なこだわりは捨てるべきです。

とはいえ、日本発祥というアイデンティティ、会社のフィロソフィーは大切です。逆に言えば、それさえしっかり守っていれば、本社をどこに置いても問題はないのではないでしょうか。

▶ 日本企業へのヒント
地域の本部の置き場所を、要る専門家や関係者がどこに集まるかで選び直してみてください。

3. グローバル化しても手放さなかった3つのこと

「コスト削減や今年の損益計算書を良くするために品質を落とし、お客様に離れられては意味がありません。」(嶋吉氏)

森田:多くの日本企業が、自分たちのアイデンティティを捨てるか守るかで悩んでいます。日本発祥のJTが、JTIに注入した日本的なものはありますか。

嶋吉:「品質」「人材育成」「4Sモデル」の三つです。4Sモデルは、お客様、株主、社会、従業員の満足をバランスよく高めていくことで、そのためには中長期の視点で経営しなければなりません。コスト削減や今年の損益のために品質を落とし、お客様に離れられては意味がありません。

R.J.レイノルズの事業を買収した後、ロシアの経済危機でJTIの経営は一気に悪化しました。それでも設備投資を続けて品質を改善し、ブランド価値を高める投資も続けました。危機が終わるとJTIの業績はV字回復し、それを見てJTIの幹部たちも品質の大切さを認識したようです。

森田:「日本のメーカーは品質過剰で、価格を下げるべき」という議論もあります。

嶋吉:確かに日本企業の製品は、品質の高さにふさわしい代金をいただけていないかもしれません。JTも当初は、品質は最高級でも価格はプレミアムより少し下げ、お客様が手頃だと感じる線を狙いました。シェアを取って価格の主導権を握った後に、適正な値付けをしました。どんなに品質が良くても、売れなければ意味がありません。値段と品質のバランスはとても重要です。

また、工場の生産性を上げ、世界規模でサプライチェーンを最適化し続ければ、品質を落とさずにコストは下げられます。

森田:JTIの人材育成はいかがですか。

嶋吉:JTIにはもともと人材育成という発想がありませんでした。必要な人はそれなりのお金を出して外から連れてくればいい、という考えです。ただ最近は、私たちのやり方を見て、人材育成にも関心を示し始めています。

▶ 日本企業へのヒント
海外拠点に「これだけは日本から持ち込む」ものを、三つに絞って言えるでしょうか。

4. 駐在員は、現地の上司が選ぶ

JT 嶋吉耕史氏(当時)と森田英一の対談の様子

「「こんな人間はいらない」と返されることもあります。」(嶋吉氏)

森田:東南アジアで日系の現地法人を支援していて、大きな問題だと思うのが駐在員制度です。3年ほどで、慣れた頃に帰国するので、本人の育成にはなっても、現地での成果はなかなか出ません。ローカルスタッフから見ると、何をしに来たのか分からない。御社の駐在員制度はどうなっていますか。

嶋吉:JTには二つの制度があります。一つはDA(デベロップメント・アサインメント)で、最低限の英語と実務経験を持つ訓練生を送ります。人件費は日本のJTが持ちます。現地からすれば、頭の良いアルバイトがタダで来たようなもので、喜んで使ってくれます。

もう一つはFA(ファンクショナル・アサインメント)で、プロフェッショナルを送ります。こちらの人件費はJTIの負担です。ですから、現地の上司が気に入らなければ受け入れを断れます。パフォーマンスの悪い人を送ったら「こんな人はいらない」と返されることもあります。

森田:一般的な日系の現地法人では、幹部の多くが日本からの駐在員です。

嶋吉:JTIはR.J.レイノルズのたばこ事業を買収し、それを母体に発展した多国籍企業なので、役員や管理職のほとんどは外国人です。日本人が上司という組織はほとんどありません。

森田:日系企業では、明確なミッションもなく、海外経験を積ませるためだけに送られる駐在員もいます。現場のニーズと合っていなければ、ローカルスタッフの不満にもつながり、駐在員もローカルスタッフも不幸です。

嶋吉:現場であまり役に立たないなら、「君は訓練生で、現地ではアルバイト並みなんだ」と自覚させてから送ったほうがいい気もします。うちでは、東京の優秀な人に海外経験を積ませたいときは、まず給与日本持ちのDAで送ります。すると「タダなのに使える」と喜ばれる。次に「また欲しい」と言われたら、給与先方持ちのFAで送るわけです。

森田:FAには「こういう成果を出せ」という明確なミッションがあるのですね。明確なミッションや責任なしに、漠然と海外に行くだけでは人は育ちません。

JTの駐在員の2つの制度。DA(デベロップメント・アサインメント)は訓練生を送り人件費は日本のJTが負担、FA(ファンクショナル・アサインメント)はプロフェッショナルを送り人件費はJTIが負担で現地の上司が受け入れを断れる

▶ 日本企業へのヒント
次の駐在員に、現地で出す成果(ミッション)を言葉にして渡していますか。

5. 買収先との統合で貫いた「経済合理性」

JT 嶋吉耕史氏(当時)と森田英一の対談の様子

「常にフェアであることは意識していました。」(嶋吉氏)

森田:これからは上司や部下が外国人というケースがどんどん増え、現地法人や買収した会社をマネジメントできる日本人を育てる必要があります。M&A後の統合を担当された頃のお話を聞かせてください。

嶋吉:2000年に日本に戻ってから5年ほど、買収したR.J.レイノルズの海外たばこ事業とJTの統合の仕事をしました。JTにとって最初の大規模なM&Aで、これでJTIが発足しました。

森田:シナジーが生まれたという意味でのM&Aの成功率は、一般に10〜20%くらいと低く、国をまたぐとさらに難しいと感じています。かなりタフな交渉をされたのではないですか。

嶋吉:そういう面もありましたが、結局は経済合理性の問題です。このときは、買収した側よりされた側のほうが、優れた事業基盤と優秀な人材を多く持っていたので、日本側のオペレーションをリストラするほうが多かったですね。

森田:なるほど。

嶋吉:当時は、海外工場の運営やゼネラルマネジャーができる人が私たちの側に少なく、買収先の人材を使わざるを得なかった面もあります。買収先の人からは「JTは出自によらず、中立に合理的な判断をした。だから君たちは信頼できると思った」と言われたことがあります。

森田:私は以前、銀行の合併に関わったことがありますが、誰がどのポジションに就くか、どちらの支店を残すかで非常にもめました。

嶋吉:銀行は難しいかもしれませんね。工場なら生産性や単位あたりのコストが数字で出るので、どちらを残すかは合理的に判断できます。もちろん日本側の人間には感傷もあったでしょうし、一部には遺恨もしばらく残りました。ただ、当時の私はまだ若手のスタッフで、経済合理性で考えるしかありませんでした。

もう一つ、あまり急がず時間をかけたことも、統合がうまくいった理由かもしれません。常にフェアであることは意識していました。

森田:その「経済合理性」こそ、グローバルでビジネスをするときの重要なキーワードだと思います。相手の優れたところを認めて権限を大きく渡し、「日本の会社だから日本人を優遇すべきだ」という発想にならなかったのは、すばらしいと思います。

▶ 日本企業へのヒント
統合や拠点の判断に「日本側だから」が入っていないでしょうか。数字で比べる基準を先に決めましょう。

6. 人事の最大の課題は「本物の経営者」を育てること

JT 嶋吉耕史氏(当時)と森田英一の対談の様子

「グローバル化はそもそも目的ではありません。」(嶋吉氏)

森田:その後、人事の仕事に就かれました。いかがですか。

嶋吉:きりがないですね(笑)。生産管理なら「いつまでに100万本」で、できたかどうかが明確です。人事制度は、今いる社員のために一生懸命つくっても、世の中も社員も変わっていく。若手の育成方法から制度まで、メンテナンスし続けなければなりません。

森田:人事担当役員として、最大の課題は何ですか。グローバル人材の育成が重要だとよく言われますが。

嶋吉:私はグローバル人材の育成そのものには、さほど興味がないんです。グローバル化はそもそも目的ではありません。まずは本物の経営者を育てる。そのためのパイプラインを、20〜30年のスパンでつくりたいと思っています。その文脈で、今の時代のトップなら当然グローバルもやる必要がある。ですから幹部候補には基本的に全員、グローバルビジネスを経験させるつもりです。

▶ 日本企業へのヒント
「グローバル人材の育成」が目的になっていないでしょうか。経営者を育てる道筋に海外経験を組み込みましょう。

7. 多国籍の組織をどう束ねるか

JT 嶋吉耕史氏(当時)と森田英一の対談の様子

「効率は下がると思います。ただ効果は上がるのではないでしょうか。」(嶋吉氏)

ダイバーシティで効率は下がるが、効果は上がる

森田:日本ではダイバーシティがもてはやされていますが、形だけに見えます。本質は意見や価値観の違いにあるので、何も考えずにやると面倒なことになり、普通はパフォーマンスも落ちます。日本人は同一性のほうが成果が上がるという成功体験を強く持っていますが、ダイバーシティでパフォーマンスは上がると思いますか。

嶋吉:インプットやコミュニケーションの量は確実に増えるので、効率は下がると思います。ただ、効果は上がるのではないでしょうか。アウトプットは、もっと良いものが出る気がします。

森田:そのような実感はありますか。

嶋吉:残念ながら、実感としてはまだありません。ただ今の若手を見ていると、私たちの時代のように画一的に「こうしろ」と動かすことはもうできない。それでは彼らのやる気を上げられません。ダイバーシティで成果が上がらないとしても、画一的なやり方ではもっと駄目になっていく気がします。

JTIではダイバーシティが当たり前で、というかそれしかありません。従業員は48か国、役員は12か国の人たちです。JTIを日本人だけで運営するのはありえません。きっと日本人はみんな辞めてしまいます(笑)。

フィロソフィーが合わない人には、辞めてもらうこともある

嶋吉:競争力を上げようと、適材適所・能力本位で採っていけば、社員は自然に多国籍になります。だからこそ求心力を保つには、自分たちの理念や哲学が合わない人には辞めてもらって結構、という姿勢も必要だと思います。

森田:日本企業は解雇に罪悪感があり、なかなかそうは言えません。成果は出しているがフィロソフィーが合わない人には、どう対応しますか。

嶋吉:日本人の場合は指名解雇ができないので、い続けてもらうしかありません。日本人以外では辞めてもらうケースもあります。ただ多くの場合、こちらが言わなくても、本人が居づらくなって辞めていきます。

JTIの役員を長く務め、非常に実績のあった方に、マネジメントスタイルが合わなくなって辞めてもらったこともあります。社員が2万5千人もいるのだから、スーパースターが一人いなくなっても何とかなるだろうと思いました。

森田:それは現場にフィロソフィーが浸透しているからで、健全な状態ですね。日系の現地法人では、合わないが成果を上げている人を、短期の利益が落ちるのが怖くて手放せない、という話をよく聞きます。

地域ごとか、グローバル一本か

森田:東南アジアでは日本の本社が介入しがちで、欧米では現地の社長に任せて数字だけを見るケースが多いようです。どこまで介入し、どこまで任せるかは難しい。ガバナンスはグローバルで統一するべきか、地域ごとに見るべきか、どうお考えですか。

嶋吉:事業の規模と地域ごとの戦略によると思います。地域に本部を置いて意思決定するには、それだけの事業規模が必要です。地域の中で資源を配分し、稼ぎ、再投資するところまで完結できるなら、地域制が有効です。そうでなければ、グローバル一本のほうが効率は良いでしょう。

▶ 日本企業へのヒント
理念に合わない人を、成果を理由に抱え続けていないでしょうか。

8. 人事制度で「共通にするもの」と「各国に任せるもの」

「これだという方程式はないと思います。」(嶋吉氏)

森田:JTとJTIで人事制度は違いますが、JTIの中では統一されているのですか。

嶋吉:まず、各国の雇用慣行や法令に従うことが大前提です。そのうえで、人事制度のグローバルの方針・哲学は全世界共通です。給与は「P75」という社内ルール(編集部注:競合他社と比べて自社の給与水準を常に上位25%以内に保つこと)で定め、その上に各国の制度が乗る形です。

国境を越えて働く駐在員は、ホームカントリーを決めて、その国の「P75」で給与を決めます。あとは、部長が次長より低くならないよう、ポジション間の調整をします。評価はJTIの中ではフォーマットを統一しています。

森田:駐在員の制度は、日本人も日本人以外も共通ですか。

嶋吉:一緒です。JTIはもともとアメリカ企業の本国以外の事業を買収したので、アメリカ人駐在員のための制度が最初からありました。今の制度はそれを土台につくりました。

森田:多くの日系企業では、駐在員制度が日本人だけにあり、外国人の制度と統合されていません。買収によって、こうしたマネジメントのノウハウも手に入るのですね。

グローバルリーダーの育て方に方程式はない

森田:最後に、買収先の統合やマネジメントができる、グローバルに活躍するリーダーはどうすれば育てられるでしょうか。

嶋吉:難しい問いですね。これだという方程式はないと思います。ただ当社では、JTIと協力して「Exchange Academy」というプログラムをやっています。2年に1回、日本人と外国人の若手を10人ずつくらい選び、東京で1週間、ジュネーブで1週間、異文化コミュニケーションやチームビルディング、グローバルビジネスのケーススタディを学ばせます。

また、将来の経営幹部を育てるには、複数のマーケットを経験させ、地域のトップをやらせることが有効だと思います。

▶ 日本企業へのヒント
人事制度を「全世界で共通にするもの」と「各国に任せるもの」に分け、一枚の表にしてみてください。

まとめ

  • 本社をどこに置くかは「べき論」ではなく、必要なインフラ(専門家や関係者)がそこにあるかで決める。守るべきは場所ではなく、日本発祥のアイデンティティとフィロソフィーだ、というのが嶋吉氏の考えです
  • JTがJTIに持ち込んだのは「品質」「人材育成」「4Sモデル(お客様・株主・社会・従業員の満足のバランス)」の三つでした
  • 駐在員は、訓練生として日本負担で送るDAと、プロとして現地負担で送るFAに分け、FAは現地の上司が受け入れを断れます。明確なミッションのない派遣では人は育ちません
  • 買収先との統合では、出自によらず経済合理性で判断し、フェアであり続けたことが信頼につながりました
  • 人事制度は、各国の法令を前提に、方針・給与の考え方(P75)・評価フォーマット・駐在員制度をグローバルで共通にしています

よくある質問

Q1. JTの駐在員制度の特徴は何ですか。
対談当時、二つの制度がありました。訓練生を日本側の負担で送るDA(デベロップメント・アサインメント)と、プロフェッショナルを現地(JTI)の負担で送るFA(ファンクショナル・アサインメント)です。FAは現地の上司が受け入れを断ることができます。

Q2. 海外子会社の人事制度は、どこまで本社と共通にすべきですか。
嶋吉氏は、各国の雇用慣行と法令に従うことを大前提に、方針と哲学は全世界共通にし、その上に各国の制度を乗せる形を紹介しています。JTIでは給与の「P75」ルール、評価のフォーマット、駐在員制度(日本人とそれ以外で共通)をそろえていました。

Q3. グローバルリーダーはどうすれば育てられますか。
嶋吉氏は「これだという方程式はない」としたうえで、日本人と外国人の若手を選んで東京とジュネーブで学ばせる「Exchange Academy」と、複数の市場を経験させて地域のトップを任せることを挙げています。そもそも目的はグローバル人材ではなく「本物の経営者」を20〜30年かけて育てることだ、とも話しています。

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beyond global は、日本・シンガポール・タイの拠点から、次世代の経営者育成、駐在員の事前研修、海外拠点を含めた人事制度づくりを支援しています。「駐在員にどんなミッションを持たせて送るか」「本社と海外拠点で何を共通にし、何を任せるか」でお悩みの方は、無料個別面談でお気軽にご相談ください。

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執筆者

森田 英一
beyond global group
President & CEO
森田 英一

大阪大学大学院 基礎工学研究科卒業。大学時代に、国際交流サークルを立ち上げる。大学院時代にアメリカとイギリスで海外でのインターンシップを経験。大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)にて人・組織のコンサルティングに従事。 2000年にシェイク社を創業し、代表取締役社長に就任。若手の主体性を引き出す研修や、部下のリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発のファシリテーションに定評がある。10年の社長を経て、現在は、beyond globalグループのPresident & CEOとして、グローバル人材育成事業、日本企業のグローバル化支援、組織開発、ナショナルスタッフの人財開発、東南アジアの社会起業家とソーシャルイノベーション事業等、各種プロジェクトを行っている。株式会社シェイク 創業社長・現フェロー。 著作に「どうせ変わらないと多くの社員が諦めている会社を変える組織開発」(PHPビジネス新書)「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「自律力を磨け」(マガジンハウス)「こんなに働いているのに、なぜ会社は良くならないのか?」(PHP出版)「3年目社員が辞める会社 辞めない会社」(東洋経済新報社)等がある。