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第1回:リテンション施策の出発点 エンゲージメントスコアを読み解く

  • 2025.08.20

優秀な社員を組織につなぎとめるためには、感覚的な対応では限界があります。
「待遇を良くする」「声をかける頻度を増やす」といった表面的な対応だけでは、根本的な離職リスクを減らすことはできません。

いま求められているのは、データに基づいた戦略的なリテンション施策です。
本記事では、エンゲージメントサーベイの分析から見えてきた「離職と強い相関があるが、満足度が低い」領域に注目し、エンゲージメント向上の本質を探ります。


相関が高く、満足度が低い項目にこそ注目を

サーベイ分析において最も重要なのは、「相関係数」と「満足度」の両面から項目を評価することです。

特に以下の項目は、離職との相関が高いにもかかわらず、満足度が低いことが多く、見落としてはならない領域です:

  • 長期的なキャリアパス
  • 昇給・昇格・ボーナス
  • パフォーマンスレビューと評価制度
  • オープンなコミュニケーション

これらの項目は、制度として存在していても、うまく機能していない、あるいは制度以前の構造的な欠陥がある可能性を示しています。


表面的な制度整備では響かない

「キャリアパスを明文化した」「評価シートを刷新した」こうした制度整備が行われたとしても、社員が“自分ごと”として認識していなければ、意味を持ちません。

たとえば:

  • 評価の基準が曖昧で、納得感がない
  • 昇格に必要な条件が不透明
  • 上司との面談が形骸化し、フィードバックが機能していない

このような状況では、制度があっても「見えない」「使われない」存在となり、不信感や離職意欲を助長することになります。


リテンションを支えるのは、社員の“納得感”

制度の有無がリテンションを左右するのではありません。
「その制度がどう伝わり、どのように理解されているか」こそが、施策の成果を分けます。

  • なぜこの制度があるのか?
  • 自分の評価は何を根拠に判断されているのか?
  • この先、自分はどんなキャリアを歩めるのか?

こうした問いに社員自身が答えられる状態をつくることこそが、離職防止の本質的アプローチです。


まとめ:本質を突く問いから始めるリテンション戦略

  • 相関が高く、満足度が低い項目は、離職リスクの温床となり得る
  • 制度を整備するだけでは不十分。納得感・理解度・運用が鍵を握る
  • サーベイ結果は「データ」ではなく、「現場の声」として捉えること
  • 対応すべきは個人ではなく、組織構造にあるという視点が重要

いま必要なのは、「制度をどうつくるか」ではなく、「制度をどう信じてもらえるか」。
リテンション戦略の第一歩は、そこから始まります。

【次ページ】第2回:キャリアパスが見えない組織は、人が育たず、辞めていく

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執筆者

森田 英一
beyond global group
President & CEO
森田 英一

大阪大学大学院 基礎工学研究科卒業。大学時代に、国際交流サークルを立ち上げる。大学院時代にアメリカとイギリスで海外でのインターンシップを経験。大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)にて人・組織のコンサルティングに従事。 2000年にシェイク社を創業し、代表取締役社長に就任。若手の主体性を引き出す研修や、部下のリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発のファシリテーションに定評がある。10年の社長を経て、現在は、beyond globalグループのPresident & CEOとして、グローバル人材育成事業、日本企業のグローバル化支援、組織開発、ナショナルスタッフの人財開発、東南アジアの社会起業家とソーシャルイノベーション事業等、各種プロジェクトを行っている。株式会社シェイク 創業社長・現フェロー。 著作に「どうせ変わらないと多くの社員が諦めている会社を変える組織開発」(PHPビジネス新書)「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「自律力を磨け」(マガジンハウス)「こんなに働いているのに、なぜ会社は良くならないのか?」(PHP出版)「3年目社員が辞める会社 辞めない会社」(東洋経済新報社)等がある。