「ローカル社員が受け身である」「新しいことに消極的だ」これは多くの海外拠点で共通して聞かれる悩みのひとつです。
しかし、それは本当に“個人の資質”によるものなのでしょうか?
実際には、人事制度のあり方そのものが、ローカル社員を受け身にさせてしまっているケースが少なくありません。
本記事では、社員の主体性を引き出すための評価制度設計について整理します。
指示待ちを生む制度の構造
「最終的には日本人が決める」
「評価されても処遇は変わらない」
このような体験が積み重なると、社員は考えることや挑戦を避けるようになります。
つまり、受け身にならざるを得ない制度設計が、主体性を奪っているのです。
この構造を打破するためには、以下の3点が不可欠です:
- 評価と処遇が明確に連動していること
- 評価基準が客観的で透明であること
- 個人が組織の未来に関わっているという実感があること
制度自体が社員の行動様式をかたちづくっている──この視点を持つことが出発点となります。
主体性を促す制度設計の方向性
社員の主体性を引き出すには、「自分たちの制度である」と納得できる仕組みが必要です。
- 設計段階からローカルの声を取り入れる
- 運用開始後もフィードバックループを設け、制度を改善していく
- 成果(KPIなど)だけでなく、行動や姿勢なども含めた多面的評価を行う
このように、結果だけでなくプロセスにも光を当てることで、公平感と納得感のある制度となり、主体性が生まれやすくなります。
評価の基準は“物差し”であり“メッセージ”
評価制度は、単なる人材の序列づけや査定の道具ではありません。
それは、「会社がどんな行動を評価し、どんな姿勢を求めているか」という明確なメッセージでもあります。
成果だけを重視すれば短期的思考が強化され、挑戦や協働が軽視される結果につながります。
一方で、挑戦や成長意欲も評価に含めれば、社員はそこに会社の価値観を見出すようになります。
制度は社員の行動様式だけでなく、組織文化そのものをかたちづくるインフラなのです。
評価と報酬の連動でモチベーションを高める
タイをはじめとした新興国では、「評価される=報われる」ことが重要視されます。
たとえば:
- 成果や行動評価に連動したボーナス制度
- 評価結果に基づいた昇給・昇格ルールの明確化
- 成長意欲を喚起する中長期のキャリアパスの提示
これらが整備されることで、ローカル社員は組織の目標と自分の成果を結びつけながら働ける環境を手に入れることができます。
ローカル経営化(3.0)への制度的支援
海外拠点の現地化は、「実務の現地化(2.0)」から「経営の現地化(3.0)」へと進みつつあります。
その移行を支える制度設計がなければ、権限を渡されても機能しません。
- 制度自体がローカルと共に設計されたもの
- ローカルマネジャーが運用に主体的に関与できる仕組み
- 評価結果に基づいてローカル人材が昇格・意思決定できる構造
「与える制度」ではなく、「共につくる制度」へ。
現地化3.0を実現するには、制度の在り方も進化させる必要があります。
まとめ:評価制度は「組織文化をつくる装置」
- 評価制度は、行動様式と価値観をかたちづくる“目に見えるメッセージ”
- 主体性を引き出すには、制度と運用の両面からの見直しが必要
- ローカル社員の納得感・透明性・報酬連動性が鍵となる
- 単なる査定の仕組みではなく、組織の未来と社員の成長をつなぐ「装置」として再構築を
制度は「評価するためのもの」ではなく、「未来をつくるためのもの」である──
この視点から、いま評価制度を再設計する意義が問われています。
beyond global group では、日本企業のグローバル化促進・企業体質の変革支援のために無料個別相談会を実施しております。
弊社のコンサルタントが、企業様のお悩みをお聞きした上で、課題の整理 / 他社事例のご紹介 / 予算の算出 / 解決策のご提案をいたします。
執筆者
beyond global group
President & CEO
森田 英一
大阪大学大学院 基礎工学研究科卒業。大学時代に、国際交流サークルを立ち上げる。大学院時代にアメリカとイギリスで海外でのインターンシップを経験。大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)にて人・組織のコンサルティングに従事。 2000年にシェイク社を創業し、代表取締役社長に就任。若手の主体性を引き出す研修や、部下のリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発のファシリテーションに定評がある。10年の社長を経て、現在は、beyond globalグループのPresident & CEOとして、グローバル人材育成事業、日本企業のグローバル化支援、組織開発、ナショナルスタッフの人財開発、東南アジアの社会起業家とソーシャルイノベーション事業等、各種プロジェクトを行っている。株式会社シェイク 創業社長・現フェロー。 著作に「どうせ変わらないと多くの社員が諦めている会社を変える組織開発」(PHPビジネス新書)「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「自律力を磨け」(マガジンハウス)「こんなに働いているのに、なぜ会社は良くならないのか?」(PHP出版)「3年目社員が辞める会社 辞めない会社」(東洋経済新報社)等がある。