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第5回:「私たちのビジョン」から始める組織変革 ビジョン・マネジメントの実践法

  • 2025.08.20

組織におけるビジョンの重要性が語られて久しい一方、多くの企業ではビジョンが掲げられたまま浸透せず、現場の行動と結びつかないまま形骸化してしまっています。

特に多様な文化背景を持つ海外拠点では、「経営層が一方的に掲げたビジョン」では機能せず、現場と乖離したまま終わるリスクが高まります。

今こそ、ビジョンを「つくる」ことにとどまらず、「マネジメントする」視点が経営に求められています。


ビジョンは“与えるもの”から“共に創るもの”へ

ビジョンの浸透には、経営者の発信力や熱量だけでは不十分です。

  • 自分たちの意見も反映されていると感じられるプロセス
  • 意思決定への関与感
  • その後の行動を変えるきっかけとなる施策

これらを通じて、ビジョンは「経営者のもの」から「私たちのもの」へと転化します。

メンバーと対話を重ね、策定過程から巻き込み、策定後には具体化・日常化に向けた取り組みを行うこと。これが“自分ごと化されたビジョン”の第一歩です。


創造的緊張感(Creative Tension)を生み出す

優れたビジョンは、単なる理想の提示ではなく、「現状とのギャップに向き合う前向きな力」を引き出します。

「ここまで到達したい。いまはそこに届いていない。だから、変わっていこう」
このような前向きな推進力が“創造的緊張感”です。

理想と現実のギャップを埋める意志を引き出すには、ビジョン構築の過程と浸透の仕組みの両面が欠かせません。


「4つのビジョンタイプ」で立体的に描く

説得力のあるビジョンを描くためには、以下4つの視点をバランスよく組み合わせることが有効です:

  • 数字型ビジョン:売上・利益・市場シェアなどの定量目標
  • 存在意義型ビジョン:社会や顧客に提供する価値
  • 組織像ビジョン:どのような文化・風土を持つ組織を目指すか
  • 事業構想ビジョン:どの領域で、どのような事業を展開するか

これらを統合することで、社員一人ひとりにとっても意味のある、立体的なビジョンが実現します。


「現地化」の進化とともに変えるべきビジョン設計

海外拠点の運営は、「駐在員主導型(1.0)」→「実務の現地化(2.0)」→「経営の現地化(3.0)」へと進化しています。

その進化に伴い、ビジョンの描き方・伝え方・担い手も変えていく必要があります。

ローカル経営人材が自らの言葉で語り、社員が自分ごととして理解し、行動につなげていく──
そのための“仕組み”と“日本人の役割転換”が欠かせません。


ビジョン浸透の5段階モデル

社員のビジョンに対する反応には段階があります:

  1. 無関心
  2. 否定・反発
  3. 形だけの承認
  4. 納得と共感
  5. 主体的参加とコミットメント

多くの組織が第2〜3段階で止まっている一方、本当の意味で組織を動かすのは、4と5の層です。

この段階に進むためには、ビジョンの「語り方」ではなく、「関わり方」を変えることが不可欠です。


まとめ:ビジョンを“実装”する経営へ

  • 優れたビジョンは、未来への共通の方向性を示し、行動を駆動する力になる
  • 策定・共有・浸透・実装というマネジメントサイクルが必要
  • 経営者は語るだけでなく、社員を巻き込み、行動に変える責任を持つ
  • 単なるスローガンで終わらせず、現場を動かす“実装されたビジョン”へ

「自分の任期中に完成するもの」ではなく、「自分がいなくなった後にも残る力」それがビジョンの真価です。

【次ページ】第6回:評価制度の再構築

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執筆者

森田 英一
beyond global group
President & CEO
森田 英一

大阪大学大学院 基礎工学研究科卒業。大学時代に、国際交流サークルを立ち上げる。大学院時代にアメリカとイギリスで海外でのインターンシップを経験。大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)にて人・組織のコンサルティングに従事。 2000年にシェイク社を創業し、代表取締役社長に就任。若手の主体性を引き出す研修や、部下のリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発のファシリテーションに定評がある。10年の社長を経て、現在は、beyond globalグループのPresident & CEOとして、グローバル人材育成事業、日本企業のグローバル化支援、組織開発、ナショナルスタッフの人財開発、東南アジアの社会起業家とソーシャルイノベーション事業等、各種プロジェクトを行っている。株式会社シェイク 創業社長・現フェロー。 著作に「どうせ変わらないと多くの社員が諦めている会社を変える組織開発」(PHPビジネス新書)「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「自律力を磨け」(マガジンハウス)「こんなに働いているのに、なぜ会社は良くならないのか?」(PHP出版)「3年目社員が辞める会社 辞めない会社」(東洋経済新報社)等がある。