「指示をしないと動かない」「自分の意見を持たず、上の判断を待っている」──こうしたローカル人材への課題感は、タイをはじめとする東南アジアの日系企業において共通して聞かれる声です。
ただし、この“指示待ち”の背景には、個人の性格や文化だけでなく、育成のアプローチや組織構造の影響が大きく関わっています。現場で「もっと主体的に」と求める前に、そもそも“主体性が育つ仕組み”があるかどうかを問い直す必要があります。
タイ人材の変化と意識の二極化
従来、タイ人材は「協調性が高く、自己主張は控えめ」とされてきましたが、特に若手を中心に意識変化が起きています。
- キャリア志向や目的志向が強まり、「何のために働くか」に関心を持つ
- 指示を待つより、自分で考えて動きたいという志向も見られる
- 一方で、考え方や判断のトレーニングが不足しており、「どう動けばよいか分からない」という層も依然多い
つまり、「考えたいけれど、考える方法がわからない」というギャップが存在しています。
“指示待ち”を生む組織の構造とは?
「もっと自律的に」「自分で判断して」と言っても、以下のような組織構造では主体性は育ちません。
- 役割や目標が曖昧で、自分に何が期待されているのかが分からない
- 上司の意見が絶対視され、異なる意見を言うことが“否定”と受け取られる
- 評価制度が“結果重視”で、思考や行動プロセスが正しく見られていない
こうした環境では、「言われたことを確実にこなすこと」が最も安全な行動になってしまい、考える余地が奪われます。
主体性を引き出すために必要な「設計」と「関わり」
ローカル人材の主体性を育てるには、以下の2つが不可欠です。
設計(役割・目標の明確化)
- 自分が何を担い、どこまで任されているかを言語化する
- マネジャーの裁量で個別に伝えるのではなく、仕組みとして全社的に共有する
関わり(対話と承認)
- 指示や答えを与えるのではなく、「どう考えるか」を問う関わり方を重視する
- 小さな行動に対してもフィードバックを行い、「自分で動いて良かった」という実感を与える
「任せたつもり」にならない
「任せているのに動かない」というケースでは、以下のような構造上の不備が見られることが多くあります。
- 何を任せたかが明確に共有されていない
- 判断の基準や期待値が伝わっていない
- 結果に対するフィードバックや評価が行われていない
任せるとは「放任」ではなく、「構造を整え、対話を重ねる」ことです。
まとめ:主体性は“構造”が育てる
- “指示待ち”は個人の資質や文化ではなく、組織設計に原因がある
- タイの若手社員は「考えたい」と思っているが、思考訓練の機会が不足している
- 主体性を育てるには、明確な役割設計と、問いかけを通じた関与が必要不可欠である
【次ページ】第3回:現地マネジャーが育たない理由とは
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執筆者
beyond global group
President & CEO
森田 英一
大阪大学大学院 基礎工学研究科卒業。大学時代に、国際交流サークルを立ち上げる。大学院時代にアメリカとイギリスで海外でのインターンシップを経験。大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)にて人・組織のコンサルティングに従事。 2000年にシェイク社を創業し、代表取締役社長に就任。若手の主体性を引き出す研修や、部下のリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発のファシリテーションに定評がある。10年の社長を経て、現在は、beyond globalグループのPresident & CEOとして、グローバル人材育成事業、日本企業のグローバル化支援、組織開発、ナショナルスタッフの人財開発、東南アジアの社会起業家とソーシャルイノベーション事業等、各種プロジェクトを行っている。株式会社シェイク 創業社長・現フェロー。 著作に「どうせ変わらないと多くの社員が諦めている会社を変える組織開発」(PHPビジネス新書)「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「自律力を磨け」(マガジンハウス)「こんなに働いているのに、なぜ会社は良くならないのか?」(PHP出版)「3年目社員が辞める会社 辞めない会社」(東洋経済新報社)等がある。