東南アジアにおける日系企業の事業運営は、かつては駐在員を中心としたトップダウン型が主流でした。しかし今、その構造に大きな変化が求められています。
特にタイをはじめとする成熟市場では、企業数の増加と人材獲得競争の激化により、“駐在員依存”から“現地自立”への転換が急務となっています。
駐在員縮小・若手化が進むなかで生まれる「現場の空白」
近年では、コスト削減や本社の働き方改革の影響により、タイ拠点でも駐在員の数は年々減少しています。また、派遣される人材も若手が中心となり、現地の状況や人材に深く関わりきれないという声が多く聞かれます。
結果として現地マネジャーに求められる役割は大きくなる一方で、
- 「任せたいが、任せきれない」
- 「候補はいるが、自走しない」
といったジレンマが各社で表面化しています。
「自立型マネジャー」不在のリスクは拡大している
この状態が続くと、以下のような問題が発生します。
- 駐在員退任後に拠点の意思決定が停滞
- 顧客対応やクレーム処理などで判断ミスが続出
- 有望なローカル人材の離職が加速し、採用・育成コストが増大
これらは一見“人材の問題”のように見えますが、実際には育成・委譲のための設計と運用の不在に起因していることがほとんどです。
育たないのではない、「育てる設計」がないだけ
ローカルマネジャーを本気で育てるには、“本人の資質”に期待するのではなく、
- どこまで任せるのかの線引き(責任と権限の定義)
- 成果に対する責任の明文化(チーム目標やKPIの設定)
- 失敗も学びと捉え、段階的に裁量を広げる運用設計
といった「育成される構造」の整備が必要です。
まとめ:任せるのは“信頼”ではなく“設計”から
- 駐在員中心のマネジメントには限界が見え始めている
- タイ現地人材をマネジメント層に育てるには、属人的でない「設計」が必要
- 自立型マネジャーは、“期待”や“根性論”ではなく、「任せる仕組み」によって育つ
【次ページ】第2回:ローカル人材の主体性をどう育てるか
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執筆者
beyond global group
President & CEO
森田 英一
大阪大学大学院 基礎工学研究科卒業。大学時代に、国際交流サークルを立ち上げる。大学院時代にアメリカとイギリスで海外でのインターンシップを経験。大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)にて人・組織のコンサルティングに従事。 2000年にシェイク社を創業し、代表取締役社長に就任。若手の主体性を引き出す研修や、部下のリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発のファシリテーションに定評がある。10年の社長を経て、現在は、beyond globalグループのPresident & CEOとして、グローバル人材育成事業、日本企業のグローバル化支援、組織開発、ナショナルスタッフの人財開発、東南アジアの社会起業家とソーシャルイノベーション事業等、各種プロジェクトを行っている。株式会社シェイク 創業社長・現フェロー。 著作に「どうせ変わらないと多くの社員が諦めている会社を変える組織開発」(PHPビジネス新書)「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「自律力を磨け」(マガジンハウス)「こんなに働いているのに、なぜ会社は良くならないのか?」(PHP出版)「3年目社員が辞める会社 辞めない会社」(東洋経済新報社)等がある。