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第5回:成功する現地化マネジメントの実践例 制度と運用が変えた“任せられる組織”

  • 2025.07.16

ここまで4回にわたり、ローカルマネジャーの育成に必要な視点を、制度と運用の両面から整理してきました。最終回となる今回は、実際にこうした仕組みを導入し、“任せられる組織”へと進化した企業事例をご紹介しながら、制度が機能するためのポイントを具体的に見ていきます。

ケース①:評価コメントと面談を通じて行動変容を促進

ある製造業の企業では、マネジャー層がプレイヤーとして業務を抱え込み、部下の育成に時間を割けていないことが課題でした。

そこで、

  • 評価項目に「部下の育成・巻き込み」要素を追加
  • 半期ごとに評価者との面談を義務化し、具体的なフィードバックを実施

この取り組みにより、マネジャーが「人を育てる立場にある」という意識を持つようになり、目標設定や日常の関わり方に変化が見られるようになりました。数期後には、次世代リーダーが現場から自然に育ち始めるようになっています。


ケース②:昇格条件を明示し、キャリア展望を“見える化”

ある物流企業では、「先が見えない」「昇格基準が分からない」といった声がローカル社員から多く上がっていました。

対応策として、

  • 等級ごとに求められる行動・成果・視座を具体化
  • 昇格要件を成果・能力・チーム運営の3観点で明示
  • 昇格に向けたアクションプランを、本人・上司・人事で共有

これにより、社員が「何を目指せば良いか」を明確にイメージできるようになり、自発的な行動や準備が増加。マネジャー層の納得感も高まり、管理職候補の意欲も安定的に醸成されました。


ケース③:制度の“翻訳者”としての日本人マネジャーの存在

制度を現場に根付かせ、形骸化させないために重要な役割を果たしたのが、日本人マネジャーによる運用支援です。

  • 面談や評価の進行をサポートし、ローカル側の思考整理を促進
  • 評価コメントを具体化し、成長につながる視点を提示
  • 本社制度を現地語・現地文化に合わせて再構築し、理解をサポート

このような関与により、ローカル側に制度への信頼と納得感が生まれ、「この制度は使えるものだ」という実感につながりました。


まとめ:“任せられる組織”は制度と運用の両輪でつくられる

  • 評価や昇格の「見える化」が行動変容とキャリア展望を後押しする
  • マネジメント能力そのものを評価・育成対象に含めることで、役割への自覚が育つ
  • 日本人マネジャーは制度の“翻訳者”として、運用の定着を支える存在となる

“制度はあるが、活用されていない”という状態を脱し、“制度によって人が育ち、任せられる”組織を目指す。その鍵は、設計された制度を“現場でどう使うか”という運用にこそあるのです。

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執筆者

森田 英一
beyond global group
President & CEO
森田 英一

大阪大学大学院 基礎工学研究科卒業。大学時代に、国際交流サークルを立ち上げる。大学院時代にアメリカとイギリスで海外でのインターンシップを経験。大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)にて人・組織のコンサルティングに従事。 2000年にシェイク社を創業し、代表取締役社長に就任。若手の主体性を引き出す研修や、部下のリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発のファシリテーションに定評がある。10年の社長を経て、現在は、beyond globalグループのPresident & CEOとして、グローバル人材育成事業、日本企業のグローバル化支援、組織開発、ナショナルスタッフの人財開発、東南アジアの社会起業家とソーシャルイノベーション事業等、各種プロジェクトを行っている。株式会社シェイク 創業社長・現フェロー。 著作に「どうせ変わらないと多くの社員が諦めている会社を変える組織開発」(PHPビジネス新書)「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「自律力を磨け」(マガジンハウス)「こんなに働いているのに、なぜ会社は良くならないのか?」(PHP出版)「3年目社員が辞める会社 辞めない会社」(東洋経済新報社)等がある。