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日系シンガポール拠点の組織人事戦略ガイド 給与水準の高騰、シンガポール拠点の役割変化...これからのシンガポール拠点運営のあり方とは?

  • 2025.05.20

目次

1. シンガポール拠点の重要テーマ

問いかけ:給与水準が上がる今、日系企業はどう対応していくべきか?

シンガポールのビジネス環境は急速に変化しています。特に、現地の給与水準の上昇は日系企業にとって無視できない課題となっています。近年、シンガポールでは労働市場の逼迫とともに人件費が高騰し、ローカル人材からの給与への期待値が高まり続けているのです。その結果、日本本社の給与体系をそのまま適用することが難しくなり、現地採用の競争力が低下している企業が増えています。

この状況において、多くの駐在員が共通して抱える問いは、「どのようにしてシンガポール拠点の優秀人材を確保、またリテンションしてもらえる、持続可能な経営を実現できるのか?」です。本社の基準に合わせた人事制度では、シンガポールの市場環境と合わず、優秀なローカル人材がすぐに退職してしまうリスクがあります。しかし、ローカルの給与水準に歩調を合わせるだけでは、コスト増加による利益圧迫を招き、単なる対症療法に終わってしまいます。

日系企業が今求められているのは、「単なる賃金調整」ではなく、「シンガポールの人材市場で競争力を持つための組織運営」です。そのためには、海外拠点のマネジメントの在り方を見直し、「単なる本社の出張所」から「現地に根ざした経営体」へと進化させる必要があります。

では、日系企業の海外拠点マネジメントには、どのようなパターンが存在し、それぞれどのような課題を抱えているのでしょうか。

海外拠点マネジメントの3パターン

海外拠点マネジメント1.0 – 2.0:駐在員主導マネジメント〜実務現地化

これは、日系企業のシンガポール進出初期によく見られる形態です。本社の意向が強く反映され、駐在員が重要な意思決定を担います。ローカル人材は実務のオペレーションを担当し、組織の中核は日本人駐在員が握っています。しかし、このモデルはシンガポールのビジネス環境の変化に適応しづらいという課題があります。特に、給与水準の上昇が続く中で、駐在員のコストが増加する一方で、ローカル人材の活用が十分に進まないという問題が浮かび上がります。

海外拠点マネジメント1.0 – 2.0:生産性・利益はもっと高められるのでは?

給与水準の上昇が避けられない状況の中、単純なコスト削減ではなく、より高い生産性を実現することが求められています。しかし、日系企業の中には、「現地化を進めたつもりでも、思うように利益が伸びない」という悩みを抱える企業も多いです。

その要因の一つが、「日本流のやり方を押し付けたまま、オペレーションだけを現地化しようとすること」にあります。例えば、KPI設定が曖昧であり、シンガポールの市場特性に合っていない場合、ローカル人材のパフォーマンスが発揮されず、組織全体の生産性向上につながりません。加えて、日本的な評価制度がローカル人材にとって不透明である場合、給与や評価に対する不満が高まり、結果的に離職率が上がってしまうのです。

海外拠点マネジメント3.0:経営現地化【引き出す・共創型組織】

給与水準の上昇に対応しつつ、持続的な組織成長を実現するためには、「経営の現地化」が必要となります。単なる「実務の現地化」ではなく、経営レベルでローカル人材を巻き込み、彼らのリーダーシップを引き出しながら、共創型の組織を築くことが求められるのです。

例えば、シンガポールで成功している一部の日系企業では、現地のマネージャー層に経営の意思決定権を委譲し、彼らが主体的に市場戦略を考え、組織運営に関与できる仕組みを整えています。これにより、ローカル人材のエンゲージメントが高まり、離職率が低下し、結果的に組織の生産性も向上しているのです。

自社を次のステップへ進むためには?

これからのシンガポール拠点の経営において、「給与水準の上昇」に対する対応は避けて通れません。単なる給与調整ではなく、海外拠点マネジメントの進化が求められています。駐在員主導のトップダウン型のマネジメントから脱却し、ローカル人材が主体的に経営に関わる環境を整えることが、組織の持続的な成長につながります。

では、日系企業はどのようにしてローカル人材のモチベーションを高め、共創型組織へと移行していけばよいのでしょうか。次章では、日系企業の構造をモチベーション理論から紐解き、その解決策を探っていきます。

2. 日系企業の構造をモチベーション理論から紐解く

シンガポールの日系企業が直面する課題

シンガポールの日系企業において、多くの企業が直面する課題の一つが、ローカル人材のモチベーション管理です。異なる価値観や文化を持つスタッフが同じ組織で働く中で、日本的な働き方や評価制度がローカル人材に受け入れられにくいケースが多く見られます。

例えば、「シンガポール人は仕事を選ぶ際に何を重視するのか?」という問いに対して、給与やキャリアの成長機会に対する期待は高く、評価や報酬の透明性が求められるのです。こうした環境の中で、日本の年功序列型の評価制度や報酬体系をそのまま適用すると、不満や離職につながる可能性が高くなります。

ローカル人材のモチベーション低下の要因

シンガポールの日系企業でよく聞かれる悩みとして、「ローカル人材の離職率が高い」「彼らが思ったほど主体的に動かない」「日本人駐在員とローカル人材の間で価値観が異なり、意思疎通がうまくいかない」といったものがあります。

特に、シンガポールの労働市場では、社員の流動性が高く、より良い条件を求めて転職することが一般的です。そのため、会社の方針や制度に対して納得感がなければ、優秀な人材ほど早期に退職してしまうリスクがあるのです。

このような状況を改善するためには、モチベーション理論を用いて人材マネジメントを再考することが必要です。特に、ハーズバーグの二要因理論を活用することで、シンガポールの労働市場に適したマネジメントが可能になります。

ハーズバーグの二要因理論とは

ハーズバーグの二要因理論では、職場の満足度を高める要因を「動機付け要因」と「衛生要因」に分けています。動機付け要因には、達成感や仕事のやりがい、キャリアの成長などが含まれ、これらが充実することで従業員のエンゲージメントが向上します。一方で、衛生要因には給与や労働環境、人間関係などがあり、これらが整っていないと従業員の不満につながります。

例えば、日系企業では、「給与を上げればモチベーションが向上する」と考えるケースが多いですが、これは衛生要因に過ぎず、根本的な動機付けにはなりません。シンガポールのローカル人材は、単に給与が高いかどうかだけでなく、どのようなキャリアパスが描けるのか、自身の成長機会があるのかを重視する傾向があります。そのため、「給与を上げたのに離職率が下がらない」といった状況が生じるのです。

シンガポールの労働環境に適した動機付け施策

シンガポールの労働環境に適応するためには、動機付け要因を強化し、ローカル人材が主体的に動ける組織を作ることが重要です。例えば、キャリアの成長を促すための明確な評価基準を設定し、短期的な成果だけでなく長期的な貢献が評価される仕組みを導入することが効果的です。また、ローカル人材が経営に関与できる機会を増やし、自ら組織の発展に貢献できる環境を整えることで、より強いエンゲージメントを生み出すことができます。

さらに、日本とシンガポールの文化的な違いを理解し、適切なコミュニケーションを図ることも欠かせません。日本では「暗黙の了解」や「察する文化」が根付いていますが、シンガポールでは、明確な指示とフィードバックが求められます。そのため、評価制度や目標設定においても、何をもって「成果」とするのかを具体的に示し、それを公正に評価する仕組みを導入することが重要なのです。

モチベーション理論を活用した人事制度の見直し

このように、モチベーション理論を活用して人事制度を見直すことで、シンガポールのローカル人材がより主体的に働き、企業の成長に貢献できる環境を作ることができます。次の章では、パフォーマンスマネジメントの具体的な手法について詳しく解説していきます。

3. パフォーマンスマネジメント

Pay for Performance へ

シンガポールのビジネス環境が急速に変化する中で、多くの日系企業が「Pay for Performance(成果に応じた報酬制度)」の導入を求められています。これまでの年功序列型や一律の昇給制度では、競争力のある報酬体系を維持することが難しく、特に優秀なローカル人材を惹きつけ、定着させることができません。成果主義の考え方を取り入れ、社員の実績や貢献度に応じた報酬を設定することで、従業員のモチベーションを高め、組織の生産性向上につなげることが求められているのです。

パフォーマンスマネジメントの種類

日系企業がシンガポールで直面する課題の一つは、適切なパフォーマンスマネジメントの手法を確立することです。従来の評価制度では、定期的な評価面談が形式的になりがちで、フィードバックが不十分なケースが多く見られました。しかし、効果的なパフォーマンスマネジメントでは、単なる評価にとどまらず、従業員の成長と企業の目標を結びつける仕組みが不可欠です。そのため、目標管理制度(MBO)やOKR(Objectives and Key Results)など、より柔軟かつ透明性の高い評価方法を取り入れる企業が増えています。

3つのダメな目標

適切なパフォーマンスマネジメントを実現するためには、目標の設定が重要です。しかし、現場でよく見られるのが「曖昧な目標」「ずれた目標」「現実的でない目標」という3つの問題です。

まず、「曖昧な目標」は、具体性が欠けているため、従業員が何を達成すべきかを明確に理解できず、評価の際にも基準が不明確になります。例えば、「売上を伸ばす」「顧客満足度を向上させる」といった目標では、具体的な指標がないため、成果の可視化が難しくなるのです。

次に、「ずれた目標」は、企業のビジョンや戦略と整合性が取れていないケースです。各部門や個人が独自の目標を設定してしまうと、組織全体の方向性がバラバラになり、企業としての成長につながりにくくなります。

最後に、「現実的でない目標」は、従業員の能力や市場環境を考慮せずに設定された高すぎる目標です。これにより、社員のモチベーションが低下し、結果的に離職率が上がる原因にもなってしまうのです。

フォーカスポイントと戦略を明確にするOGSMフレームワーク

適切な目標設定を行うためには、「OGSMフレームワーク(Objective, Goals, Strategies, Measures)」が有効です。このフレームワークを用いることで、企業のビジョンを明確にし、それを実現するための具体的な戦略と測定指標を整えることができます。

例えば、「市場シェアの拡大」をObjective(目的)とする場合、具体的なGoals(目標)として「年間売上10%増加」などの数値を設定します。その上で、Strategies(戦略)として「新規顧客の獲得強化」や「既存顧客のロイヤルティ向上」などの施策を立て、それぞれの進捗をMeasure(指標)で定量的に管理することが可能になります。このように、OGSMを導入することで、組織全体の方向性を統一し、目標達成のためのアクションを明確にすることができるのです。

いい戦略的KPIを立てるためのヒント

効果的なKPIを設定するためには、まず「Critical Success Factor(CSF)」を明確にすることが重要です。CSFとは、企業が成功するために欠かせない要素を指し、それを正しく特定することで、組織のパフォーマンス向上につながります。

次に、プロセス全体を見渡し、「最も弱い部分(ボトルネック)」を特定し、そこを最適化することが求められます。制約条件理論(Theory of Constraints)では、一つのボトルネックが全体の生産性を決定づけるため、まずはこの部分の改善を優先するべきだとしています。例えば、製造業において生産ラインの一部が遅延し、全体のスループットを阻害している場合、その工程の最適化を図ることで生産性を大幅に向上させることができるのです。

また、バランススコアカード(Balanced Scorecard)の考え方を取り入れることで、財務指標だけでなく、顧客満足度、業務プロセス、学習・成長といった複数の観点からKPIを設定することが可能になります。これにより、短期的な成果だけでなく、持続的な成長を促す評価制度を構築できます。

そもそも誰に、成果評価は向くのか?

成果評価を実施する際には、「誰に対して成果主義を適用するのか」を明確にすることが重要です。すべての社員に一律に成果評価を適用すると、不確実性が高い業務を担当する社員や、長期的なプロジェクトに関与している社員にとって、不公平感が生じる可能性があります。

そのため、ポジションや役割に応じた評価の仕組みを構築することが必要です。例えば、製造業において、ライン作業員には品質基準の達成度や生産効率をKPIとして設定し、一方で管理職にはプロセス改善やコスト削減の成果を評価指標とすることが適切です。役割に応じたKPIを設計することで、公平な評価制度を実現できるのです。

成果主義を適切に導入することで、社員のモチベーションを高め、組織全体の生産性を向上させることができます。しかし、それには適切な目標設定と評価制度の設計が不可欠です。次の章では、制度をうまく機能させるための運用ポイントについて詳しく解説していきます。

4. 制度をうまく機能させる運用ポイント

人事制度は運用が肝

人事制度は設計するだけではなく、実際にどのように運用するかが組織の成果を大きく左右します。特に、シンガポールのような多様な労働環境では、評価や報酬の透明性、運用プロセスの明確化が不可欠です。適切な運用がなされていないと、優秀な人材が流出し、組織全体のモチベーションが低下するリスクがあります。そのため、制度を機能させるための具体的な運用ポイントを押さえることが重要なのです。

評価基準をすり合わせる3つのポイント

シンガポールの労働市場では、成果に基づいた評価が重視される一方で、日本の企業文化とは異なる価値観を持つ従業員も多くいます。そのため、公平で納得感のある評価制度を運用するためには、以下の3つのポイントが重要です。

まず、評価基準を具体的で測定可能なものにすることが求められます。曖昧な評価ではなく、KPIや業務成果を明確に設定することで、従業員が何を目標とすべきかを理解しやすくなります。例えば、製造業であれば「ラインの稼働率」や「不良品率の低減」、営業職では「新規契約の件数」などが評価の指標となるのです。

次に、評価プロセスの透明性を確保することが不可欠です。評価がブラックボックス化してしまうと、従業員の不満や不信感につながる可能性があります。シンガポールの労働市場では、評価基準の文書化や定期的なフィードバックが求められます。特に、年1回の評価ではなく、四半期ごとの目標進捗確認を行うことで、従業員の納得感を高めることができるのです。

最後に、評価と報酬の連動性を明確にすることが求められます。シンガポールでは成果主義が一般的であり、評価結果が給与や昇進に直結することが期待されています。そのため、評価基準を明確にし、昇給・インセンティブの仕組みを従業員に理解させることが重要です。

1on1ミーティングの効果的な運用

評価制度の形骸化を防ぐためには、定期的な1on1ミーティングの実施が不可欠です。特に、シンガポールの労働環境では、キャリアの成長機会を重視する従業員が多く、日常的なフィードバックが求められます。

1on1ミーティングの目的は、単なる業務の進捗確認ではなく、従業員の成長をサポートし、組織のパフォーマンス向上につなげることです。上司が従業員の目標達成度を確認し、課題を共有することで、適切なアドバイスや支援を提供することができます。

また、上司のコーチングスキルを磨くことも重要です。単に指示を与えるのではなく、従業員が自発的に考え、行動できるようにサポートすることで、エンゲージメントを向上させることができます。特に、成功体験を積み重ねさせることで、従業員のモチベーションを高めることができるのです。

ローパフォーマーへの対応とPIPの活用

組織全体のパフォーマンスを維持するためには、ローパフォーマーへの適切な対応が必要です。そのための有効な手法の一つが、PIP(Performance Improvement Plan:業務改善計画)の導入です。

PIPは、パフォーマンスが基準に達していない従業員に対し、具体的な改善計画を策定し、一定期間内に成果を向上させるための仕組みです。PIPを効果的に運用するためには、明確な目標設定と進捗のフォローアップが不可欠です。

まず、ローパフォーマンスの原因を特定することが必要です。スキル不足が原因であれば、適切なトレーニングを提供し、成長の機会を設けることで改善を促します。一方で、業務プロセスの問題であれば、タスクの見直しや再配置を行うことで、パフォーマンス向上につなげることが可能です。

次に、PIPの期間中は定期的なレビューを実施し、進捗を確認することが求められます。短期的な目標を設定し、達成度を評価しながら、必要なサポートを提供することで、従業員の成長をサポートすることができます。

最終的に、PIPが完了した後も継続的なフォローアップを行い、パフォーマンスの維持をサポートすることが重要です。PIPの導入により、従業員が改善の機会を得るだけでなく、組織全体のパフォーマンス向上にも貢献することができるのです。

5. 制度構築・ブラッシュアッププロセスのポイント

ポイント:ローカル人材を巻き込みながら実施する

制度を設計し、運用する上で重要なのは、ローカル人材を巻き込んで進めることです。日本本社の基準をそのまま適用するのではなく、現地の労働環境や価値観に合わせた設計を行うことで、制度の実効性が高まります。特に、シンガポールのように多様なバックグラウンドを持つ従業員が働く環境では、単にトップダウンで制度を導入するのではなく、現場の意見を反映しながら柔軟に構築することが求められるのです。

ローカル人材を巻き込むプロセスでは、初期段階から彼らの意見を収集し、制度設計の方向性を共に考えることが重要です。例えば、フォーカスグループディスカッションを実施し、従業員が感じている課題や改善点を洗い出すことで、実態に即した制度設計が可能となります。また、試験運用の段階でフィードバックを受けながら調整を行うことで、納得感のある制度へとブラッシュアップできるのです。

プロセス①:組織状況の把握(組織総合診断、人事評価制度診断)

制度を新しく構築したり、既存の仕組みを改善する際には、現状の組織状況を把握することが不可欠です。制度がうまく機能していない場合、その原因を特定しないまま新しい施策を導入しても、同じ問題が繰り返される可能性があります。そのため、まずは組織全体のパフォーマンスや従業員の満足度、評価制度の透明性などを診断するプロセスが必要なのです。

具体的には、組織総合診断や人事評価制度診断を活用し、現在の制度がどの程度機能しているかを客観的に分析します。例えば、従業員アンケートや1on1ミーティングを通じて、評価制度への納得度やキャリアパスの明確さを測定することができます。これにより、組織の現状と課題を把握し、どの部分にテコ入れが必要なのかを明確にすることができるのです。

プロセス②:方針策定_企業の目指す方向性と制度の整合性

組織の現状を分析した後は、新たな制度の方向性を明確にするフェーズに移ります。人事制度は単なる管理ツールではなく、企業の経営戦略と密接に結びついたものでなければなりません。そのため、会社がどのような成長を目指し、どのような組織文化を築きたいのかを定めた上で、それに合った制度を設計することが求められるのです。

方針策定の際には、経営層と現場の意見をすり合わせながら進めることが大切です。例えば、シンガポールの市場に適した人材確保や育成の仕組みを考える際には、経営陣だけでなく、現場のマネージャー層やリーダー層の意見も積極的に取り入れることで、実際に機能する制度を設計できます。

また、評価制度の目的を明確にし、「従業員の成長を促すものなのか」「業績向上を最大の目的とするのか」といった視点を整理することも重要です。目的が曖昧なまま導入すると、評価基準が定まらず、制度が形骸化してしまう可能性があるのです。

プロセス③:人事制度構築

方針が決まった後は、具体的な人事制度を構築するフェーズに入ります。この段階では、評価基準の策定、報酬体系の見直し、昇進・昇格の基準設定など、運用に関わる詳細を決定していきます。特に、シンガポールの労働市場に適した制度を設計するためには、日本の仕組みをそのまま適用するのではなく、現地の働き方や価値観に合わせて調整することが必要です。

例えば、報酬制度については、固定給だけでなく、成果に応じたボーナスやインセンティブ制度を組み合わせることで、従業員のモチベーションを高める仕組みを整えることができます。また、昇進・昇格のプロセスにおいても、単に年次や在籍期間を基準とするのではなく、具体的な業績やリーダーシップの発揮度合いを考慮した透明性のある仕組みにすることが重要です。

さらに、制度の運用開始後も継続的なフィードバックを受けながら、ブラッシュアップを行うことが不可欠です。御社でも定期的な制度レビューを実施し、運用の中で生じた課題を改善することで、長期的に効果を発揮する制度へと発展させることができます。

6. まとめ

人事制度の設計と運用は、シンガポール拠点の組織成長にとって欠かせない要素です。適切な評価基準の設定、ローカル人材を巻き込んだ制度設計、そして継続的なブラッシュアップが求められます。単なる管理ツールではなく、御社の成長戦略の一環として機能させることで、従業員のエンゲージメントを高め、組織全体の生産性を向上させることができます。

しかし、現地の市場環境や従業員の価値観に合った制度を構築し、適切に運用することは決して容易ではありません。評価基準の不透明さや報酬体系の不整合は、従業員の離職やモチベーション低下を招くリスクがあるため、慎重な設計と運用が必要です。

制度を効果的に機能させるためには、現場の意見を取り入れながら、データに基づいた管理を行い、透明性を確保することが重要です。また、シンガポール市場の変化に適応しながら、御社の成長に貢献する制度へと継続的に進化させる必要があります。

御社のパフォーマンスマネジメントや人事制度に課題を感じていらっしゃる場合は、一度専門家の視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。現地の労働環境に精通したプロフェッショナルが、御社の状況に即した改善策を提案し、最適な制度設計をサポートします。無料相談も受け付けておりますので、ぜひご活用ください。

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執筆者

森田 英一
beyond global group
President & CEO
森田 英一

大阪大学大学院 基礎工学研究科卒業。大学時代に、国際交流サークルを立ち上げる。大学院時代にアメリカとイギリスで海外でのインターンシップを経験。大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)にて人・組織のコンサルティングに従事。 2000年にシェイク社を創業し、代表取締役社長に就任。若手の主体性を引き出す研修や、部下のリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発のファシリテーションに定評がある。10年の社長を経て、現在は、beyond globalグループのPresident & CEOとして、グローバル人材育成事業、日本企業のグローバル化支援、組織開発、ナショナルスタッフの人財開発、東南アジアの社会起業家とソーシャルイノベーション事業等、各種プロジェクトを行っている。株式会社シェイク 創業社長・現フェロー。 著作に「どうせ変わらないと多くの社員が諦めている会社を変える組織開発」(PHPビジネス新書)「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「自律力を磨け」(マガジンハウス)「こんなに働いているのに、なぜ会社は良くならないのか?」(PHP出版)「3年目社員が辞める会社 辞めない会社」(東洋経済新報社)等がある。