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第4回:制度は回り出した後が勝負 現場が自走するための支援設計

  • 2025.07.15

人事制度は、設計や導入が終わったら完成ではありません。むしろ本当の勝負は、制度が「現場に浸透し、継続的に活用される段階」から始まります。タイの現場でも、制度を導入した当初は一定の緊張感でうまく回っていても、時間が経つにつれて「形だけの運用」に戻ってしまうケースが少なくありません。
今回は、制度を定着させて現場が自走できる状態をつくるために必要な支援の視点を整理します。

制度は時間とともに“ズレ”が生じる

制度自体は導入後も変わらなくても、事業や組織のフェーズの変化により、現場の期待や業務の実態と合わなくなることがあります。その結果として、

  • 評価コメントが毎回似たような表現になり差がつかない
  • 面談が形式的になり、本音の対話が減る
  • 評価結果が現在の処遇と結びついている実感が弱まり、納得感が下がる

といった「ズレ」が起きやすくなります。制度を導入したあとこそ、こうした変化をキャッチし、調整する支援が必要です。


継続支援で“制度の質”を保つ

制度の質を維持するには、運用を支える仕組みを継続的に用意することが不可欠です。

  • 定期的なフィードバック研修で、評価者のスキルを保つ
  • キャリブレーション(評価者間の基準合わせ)で評価のブレを抑える
  • 管理職向けの振り返りの場を設定し、現場での変化や課題を共有する

「一度教えれば大丈夫」というほど簡単ではありません。小さくても定期的なフォローを続けることで、制度は初めて根づいていきます。


現場で起きる“形骸化”の兆しに気づく

制度が形骸化しはじめる兆候としては、次のようなものがあります。

  • どの部下にも似たような評価コメントしか残っていない
  • 面談で「大丈夫?」「OK?」だけで終わってしまう
  • 目標設定が単なる義務のチェックで終わっている

こうしたサインを見逃さず、 面談の内容や評価のプロセスを定期的に確認する仕組みを作ることが大切です。


制度を“見える化”し続ける仕掛け

制度の効果を保つためには、「制度がどう活用されているか」を組織全体で可視化する取り組みが有効です。

  • 面談の実施率・評価コメントの質などをレポートとして共有する
  • 評価結果の傾向や処遇との連動状況をモニタリングする
  • 優れたフィードバック事例を社内で紹介し、学びの機会とする

制度の存在を日常の中で“思い出させる”仕組みが、自走を後押しします。


まとめ:制度を動かすのは“導入後の支援”

  • 制度は時間とともに、現場とのズレが生じやすい
  • 継続的な研修や振り返りの場を用意し、支援し続ける必要がある
  • 活用状況を“見える化”し、現場が自走できる環境をつくる

制度導入のゴールは、「導入完了」ではありません。むしろそこからが始まりです。制度を継続的に育てる支援設計こそが、制度を“仕組み”として根づかせるために欠かせない視点です。

【次ページ】第5回:“評価されて終わり”にしない

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執筆者

森田 英一
beyond global group
President & CEO
森田 英一

大阪大学大学院 基礎工学研究科卒業。大学時代に、国際交流サークルを立ち上げる。大学院時代にアメリカとイギリスで海外でのインターンシップを経験。大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)にて人・組織のコンサルティングに従事。 2000年にシェイク社を創業し、代表取締役社長に就任。若手の主体性を引き出す研修や、部下のリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発のファシリテーションに定評がある。10年の社長を経て、現在は、beyond globalグループのPresident & CEOとして、グローバル人材育成事業、日本企業のグローバル化支援、組織開発、ナショナルスタッフの人財開発、東南アジアの社会起業家とソーシャルイノベーション事業等、各種プロジェクトを行っている。株式会社シェイク 創業社長・現フェロー。 著作に「どうせ変わらないと多くの社員が諦めている会社を変える組織開発」(PHPビジネス新書)「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「自律力を磨け」(マガジンハウス)「こんなに働いているのに、なぜ会社は良くならないのか?」(PHP出版)「3年目社員が辞める会社 辞めない会社」(東洋経済新報社)等がある。