Article

第4回:マネジャー思考から脱却せよ 経営者に求められる“3つの決断軸”とは

  • 2025.08.20

多くの海外拠点では、日本本社から派遣された駐在員が経営を担っています。しかしその多くは、「経営者としての経験は初めて」というケースです。

本記事では、マネジャーと経営者の違いに焦点を当てながら、いま求められる視座の転換と意思決定の本質について整理します。


マネジャーと経営者の違いとは?

マネジャーと経営者は、役割も視点も根本的に異なります。以下に主要な違いを整理します:

項目マネジャー経営者
視座組織の一部/部門最適組織全体/全体最適
時間軸半年〜1年の業績管理3〜10年先を見据えた構造設計
リソースの扱い与えられた人・物・金でやりくり必要に応じて調達・再配分する
思考スタイル調整型/改善型撤退や集中を選ぶ戦略型
主な役割管理と育成意思決定とビジョン構築

特に重要なのは、「視座」と「時間軸」の違いです。経営者とは、目の前の管理業務に留まらず、3年後、5年後の組織の姿を構想し、形づくる存在でなければなりません。


意思決定こそ経営者の本質

経営者の仕事の中核は、意思決定です。

「投資するか、撤退するか」「集中するか、やめるか」──こうした未来に関わる判断は、マネジャーや社員にはできません。決めるのは経営者の責任です。

マネジャーが与えられた枠組みの中で成果を出すのに対し、経営者はその枠組み自体を見直し、変革する立場にあります。
意思決定は時に痛みを伴いますが、先送りを重ねた結果として生まれるリスクは、はるかに大きくなります。


経営判断に必要な「3つの軸」

未来に向けた判断には、次の3つの視点が不可欠です

  • 全体最適:部門や拠点の利害を超え、会社全体の価値を最大化する視点
  • 長期的視野:任期中の成果だけでなく、持続可能な競争力の基盤を整える視点
  • 戦略的集中:限られた経営資源を、最も影響の大きい領域に投下する勇気

これらの判断軸は、短期的な業績評価や日常業務の中では見落とされがちですが、中長期的には組織の明暗を分ける要素となります。


「私たちのビジョン」へ ビジョンマネジメントの実践

経営者が描くビジョンは、単なるスローガンでは意味を持ちません。社員一人ひとりにとって「自分ごと」になって初めて、ビジョンは組織を動かす力となります。

そのためには、以下のような仕掛けが必要です:

  • 社員を巻き込んで共に考える「対話の場」の設計
  • 行動変容につながる制度やカルチャーの仕掛けづくり
  • 現状とのギャップに挑む、創造的な緊張感の演出

ビジョンを「語る」のではなく、「浸透させ、実装する」こと。これが経営者に求められるもう一つの役割です。


まとめ:マネジャー型から経営者型への進化を

  • 経営者に必要なのは、組織全体を見通す視座と未来志向の判断力
  • 判断を避けず、集中と選択によって変革の方向性を示すことが求められる
  • ビジョンは単なるスローガンではなく、「実装される構想」でなければならない
  • 任期が限られていても、未来をつくる意思決定は今この瞬間から始められる

【次ページ】第5回:「私たちのビジョン」から始める組織変革

無料個別相談会

beyond global group では、日本企業のグローバル化促進・企業体質の変革支援のために無料個別相談会を実施しております。 弊社のコンサルタントが、企業様のお悩みをお聞きした上で、課題の整理 / 他社事例のご紹介 / 予算の算出 / 解決策のご提案をいたします。

執筆者

森田 英一
beyond global group
President & CEO
森田 英一

大阪大学大学院 基礎工学研究科卒業。大学時代に、国際交流サークルを立ち上げる。大学院時代にアメリカとイギリスで海外でのインターンシップを経験。大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)にて人・組織のコンサルティングに従事。 2000年にシェイク社を創業し、代表取締役社長に就任。若手の主体性を引き出す研修や、部下のリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発のファシリテーションに定評がある。10年の社長を経て、現在は、beyond globalグループのPresident & CEOとして、グローバル人材育成事業、日本企業のグローバル化支援、組織開発、ナショナルスタッフの人財開発、東南アジアの社会起業家とソーシャルイノベーション事業等、各種プロジェクトを行っている。株式会社シェイク 創業社長・現フェロー。 著作に「どうせ変わらないと多くの社員が諦めている会社を変える組織開発」(PHPビジネス新書)「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「自律力を磨け」(マガジンハウス)「こんなに働いているのに、なぜ会社は良くならないのか?」(PHP出版)「3年目社員が辞める会社 辞めない会社」(東洋経済新報社)等がある。