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第3回:現地マネジャーが育たない理由とは “成果責任の不在”と“巻き込み不足”の構造問題

  • 2025.07.16

ローカル人材に対して「そろそろマネジャーとして活躍してほしい」と期待をかけても、実際には育たない、任せきれない、こうした課題は、タイの日系企業でもよく聞かれます。

その背景には、「本人の能力不足」や「主体性の欠如」といった個人要因が語られがちですが、実際には成果責任が定義されていない役割設計や、巻き込みの経験が得られない運用の仕方といった、組織側の構造的な問題が存在しています。

役職だけ“マネジャー”、実態は“プレイヤー”

多くの企業では、マネジャーという肩書きが与えられていても、実態は以下のようなケースが目立ちます。

  • 管理すべき部下がいない、または非常に少ない
  • チーム単位でのKPIや成果目標が設定されていない
  • 成果ではなく、業務の忙しさや忠実さが評価される

つまり、“組織の成果を担う存在”として、明確な役割が定義されていないままマネジャーに昇格させてしまっているのです。


成果を出しても、評価も報酬も変わらない

タイでは、昇格=処遇向上という意識が強いため、以下のような状態はモチベーションを大きく下げる要因になります。

  • プレイヤーの方が成果を出しやすく、評価も高い
  • マネジメントの難しさに対する支援や研修がない
  • 部下育成や巻き込みに尽力しても、自分の処遇に反映されない

こうした「引き受け損」の構造が続く限り、優秀な人材ほどマネジメントを敬遠し、管理職ポストが“空席化”する現象が起こります。


巻き込む経験がないと、育たない

企業側が「リーダー的な役割を与えている」と考えていても、本人は以下のように感じていることがあります。

  • 「上から言われたことをそのまま伝えるだけ」
  • 「自分の考えを挟んではいけない」
  • 「責任はあるのに決定権がない」

マネジメントとは、指示を伝えることではなく、「意思決定し、周囲を巻き込み、結果を出す」こと。こうした経験を通じて初めて、マネジャーとしての自覚と力が育まれます。


任せきれないのは“仕組み”の不在

多くの日本人上司は、「ある程度は任せているが、それ以上は難しい」と感じています。たとえば、

  • 顧客対応を任せた結果、トラブルが発生し、最終的に自分が対応することになった
  • 報告・連絡・相談が不十分で、現場の状況を把握できなかった
  • 問題が起きた際、「誰が責任を取るのか」が曖昧だった

これらはすべて、「任せるための仕組み」が整っていないまま、属人的な判断で任せてしまった結果です。


まとめ:育たないのではなく、育つ構造がない

  • 「名前だけマネジャー」で、成果責任を持たせていない
  • 成果に対する評価・報酬が連動しておらず、動機づけが機能していない
  • 巻き込みや意思決定の経験がないまま、役職だけ与えてしまっている

現地マネジャーの成長には、“任せる前提の制度”と“巻き込む経験の設計”が必要です。タイの人材は、仕組みに納得し、実感を持てば着実に育ちます。足りないのは「仕組みと運用」の側なのです。

【次ページ】第4回:ローカルマネジャーに任せるための制度設計

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執筆者

森田 英一
beyond global group
President & CEO
森田 英一

大阪大学大学院 基礎工学研究科卒業。大学時代に、国際交流サークルを立ち上げる。大学院時代にアメリカとイギリスで海外でのインターンシップを経験。大学院卒業後、外資系経営コンサルティング会社アクセンチュア(当時、アンダーセンコンサルティング)にて人・組織のコンサルティングに従事。 2000年にシェイク社を創業し、代表取締役社長に就任。若手の主体性を引き出す研修や、部下のリーダーシップを引き出す管理職研修や組織開発のファシリテーションに定評がある。10年の社長を経て、現在は、beyond globalグループのPresident & CEOとして、グローバル人材育成事業、日本企業のグローバル化支援、組織開発、ナショナルスタッフの人財開発、東南アジアの社会起業家とソーシャルイノベーション事業等、各種プロジェクトを行っている。株式会社シェイク 創業社長・現フェロー。 著作に「どうせ変わらないと多くの社員が諦めている会社を変える組織開発」(PHPビジネス新書)「一流になれるリーダー術」(明日香出版)「自律力を磨け」(マガジンハウス)「こんなに働いているのに、なぜ会社は良くならないのか?」(PHP出版)「3年目社員が辞める会社 辞めない会社」(東洋経済新報社)等がある。