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第1回「HR Forum Singapore 2019 」開催レポート:アジアにおけるこれからの強い日系企業とは?グローバル人事の潮流を語り合うプラットフォームの創出

2019年7月30日(火)に、弊社 beyond global と、シンガポール大手人材紹介会社のJAC Recruitment、及びシンガポール国立大学NUS Centre for Language Studiesとの3社共催により、初の大規模な人事フォーラム「HR Forum Singapore 2019」を、シンガポールのマンダリン・オリエンタル・ホテルにて開催いたしました。

 

今回のフォーラムには、200名近い在星日系企業・ローカル企業の経営者、人事責任者の方々にご来場いただきました。

 

フォーラムのメインテーマは『アジアにおけるこれからの強い日系企業とは?』と題し、アジア全域に進出している多くの日系企業がいま、リアルに直面している人材と組織の課題の本質を掘り下げ、企業同士の枠を超えて、広く大局的な視点から討議するという、初の試みでした。

 

開催主旨に賛同いただきました、JETRO(日本貿易振興機構)及びJCCI (シンガポール日本商工会議所)の後援を受けて、大盛況のうちに開催することができ、運営チーム一同、改めて心より感謝申し上げます。

 

組織と人事の未来は、枠を超える

 

「海外現地法人の人事制度の見直し・改革は喫緊の課題だと認識しつつも、日本本社との認識にギャップがあり、方向性が見えない」

 

「優秀なローカル人材の流出を止められない。組織体質から抜本的に変えない限り、真のグローバル化にはほど遠いと感じる」

 

こういったお悩みは、我々コンサルタントが年間数百人の経営者や人事責任者の方々とお話させていただく中で、頻繁に耳にする声です。

 

いま貴社が抱えている組織課題は、決して貴社だけの問題ではなく、似たような課題で悩み、しかしそれを乗り越え、強いチームとしてアジアでの成長を目指す人も組織も、根底にある願いはどこか共有しているものです。

 

組織と人事の未来を変えるためには、企業の内部だけで解決しようとするのではなく、企業の枠と垣根を超えて、良質な情報を分かち合い、共に学び合う場が必要である、と我々は考えました。

 

「既存の場がないのであれば、創ろう」ということで今回、世界基準の人事変革やグローバル化のトップランナーたちに広く呼びかけ、想いに共感してくださった方々の多大なるサポートを得て、実現することができました。

 

共に学び、共に創るプラットフォーム

 

冒頭では、当フォーラムの発起人でもある弊社代表の森田英一より、フォーラムの主旨と目的についてスピーチさせていただきました。

 

多国籍人材が混在するグローバル組織を率いるリーダーたちはいま、どのような視座を持ち、どう在るべきなのか?

 

形式だけではない、「真のグローバル化」を目指す組織に欠かせないファクターとは?

 

フォーラムでは、こういった様々なテーマを議論するにあたり、参加者がリアルタイムで質問を入力できるオンライン質疑応答サービスを採用し、参加者からも自由に質問や意見を主催側に送信することができました。

 

アジア人事施策の最前線を担う当事者同士が、HR情報を分かち合い、さらには互いの立場からの異なる視点を共有する場を「共に創る」という稀有な機会に、参加者の期待も高まったようでした。

 

【第1部】中竹竜二氏 特別基調講演
『眠っているメンバーよ!目を覚ませ!』

 

第1部の特別基調講演では、株式会社チームボックス代表取締役の中竹竜二氏にご登壇いただき、チームメンバーの潜在能力を最大限活かすリーダーシップの在り方について、ご講演いただきました。

 

中竹竜二氏は「フォロワーシップ論」の提唱者のひとりであり、早稲田大学ラグビー部を大学選手権二連覇に導いたコーチとして実績を積まれた後、現在はスポーツとビジネスの領域で、グローバルリーダーの育成と組織開発を専門に活躍の場を広げていらっしゃいます。

 

これからの時代の新しいリーダーに求められる力とは、「答える力」よりも「問う力」(いかに良い問いを立てられるか?)、「教える力」よりも「学ぶ力」(いかに失敗から学ぶか?)、「優秀さ」よりも「正直さ」(いかに弱さをさらけ出し、正直な姿勢を貫けるか?)といった数々の持論を展開し、聴衆の心をがっちり掴んでいました。

 

「オーセンティックリーダーシップ」
部下をどうするか?ではなく、自分がどう変わるか?

 

中竹竜二氏は普段、「コーチのコーチのコーチ」として、指導する人を指導するコーチをさらに指導するプロとして人材を育てる中で、「指導する立場にある者ほど、学び続ける姿勢がいかに大切であるか」という視点について、実体験を交えてシェアしてくださいました。

 

指導者中心から学習者中心主義に変化しているコーチングの潮流において、良いコーチングとは、「失敗のプロセスをどう経験させるか」であると言います。

 

世界で勝つコーチは「勝利」を強調せず、「全力」でやることを指導し、失敗したときこそ、より良い未来に目を向けさせる絶好のチャンスであると捉えます。

 

そして「部下をどうするか?ではなく、自分がどう変わるか?」常にリーダー自身が内省できるマインドを持っているかどうか。

 

中竹氏の躍動感あふれる講演に参加者の方々は熱心に聴き入っており、講演後のアンケートでは、中竹氏の講演について、実に95%以上の方が「満足した」「非常に参考になった」と回答されていました。

 

【第2部】①JAC Recruitmentによる
アジア人材戦略レポートのプレゼンテーション

 

続いて第2部では、JAC Recruitmentの早瀬 恭マネジングダイレクターによる、グループASEAN各国拠点(香港、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム、中国、インド)の日系企業現地子会社850社以上を対象に実施したアジア人材戦略調査を基にしたプレゼンテーションが展開されました。

 

業績目標を達成している企業は、「理念・ビジョン研修の実施頻度が高い」「域内・グローバルで統一された人事制度(またはそれを一部ローカライズしたもの)を使用している」「長期インセンティブを導入している」「管理職と従業員が経営戦略について定期的にコミュニケーションしている」などの傾向があるといった調査結果を紹介。

 

アジアで活躍する人事の専門家による
各社の挑戦と世界最新の人事施策をご紹介

パネルディスカッションの前段には、各登壇者たちによるショートプレゼンテーションが実施されました。

 

石井淳子氏 :JETRO Singapore, Managing Director

 

JETROシンガポールの石井淳子マネジングダイレクターは、2018年度アジア・オセアニア進出日系企業の実態調査レポートを基に講演。今後1~2年の国・地域別の事業展開の方向性や、現地従業員の増減傾向を紹介いただきました。

 

シンガポールでは現地従業員の数は横ばい傾向にある一方、ミャンマー、パキスタン、インド、ベトナムなどの南西アジア地域では、「増加」と回答した企業の割合が5割を上回ったことが分かりました。

 

経営上の問題点に関しては、「従業員の賃金上昇」と回答した企業の割合が最も高く(65.9%)、その次に「品質管理の難しさ」(49.6%)、「競合相手の台頭(コスト面で競合)」(49.4%)と続きました。

 

溝端正二郎氏 :KYOCERA Asia Pacific, HR & Admin Div. General Manager

 

続いて登壇された、京セラアジアパシフィックの溝端正二郎人事部ゼネラルマネジャーは、「長年の低い離職率」と「多角化・グローバル化による安定経営」を実現されている、日本型の理念経営ならではの人材マネジメントについてお話いただきました。

 

京セラでは、フィロソフィーエッセイとして、経営理念についての冊子を英訳して全社員に共有しているほか、 幹部・階層別の集合研修の実施や、目標管理制度(MBO)における理念浸透教育にも注力されているそうです。

 

経営の原点である企業理念を全社員と共有することで、時代や環境で変化するものには柔軟に対応しつつ、「多様な人材が活躍できる全員参加集団」として、グローバル市場でのプレゼンスを発揮できると言います。

 

日髙達生氏 :Rakuten Asia, Corporate Culture Div. General Manager

 

次に、楽天アジアの日髙達生コーポレートカルチャー部ゼネラルマネジャーにご登壇いただき、従来の人事部門とは別に立ち上げた「コーポレートカルチャー部」の取り組みを中心とした、楽天のグローバル人事&組織開発について、お話いただきました。

 

楽天のコーポレートカルチャー部は、①理念浸透を中心としたカルチャー醸成、②サスティナビリティの追求、③従業員の健康とウェルビーイングという三本柱を活動のテーマに、「これまでにない人と組織の在り方を追求すること」を目的に作られた、人と組織に特化した研究開発部門です。

 

これまでは、楽天流の強いリーダーシップによって、買収先の企業に対して「楽天主義」を浸透させるという戦略をとってきたのに対し、これからの未来は、買収先の企業カルチャーや価値観をまず尊重しながら、そこから学び、楽天グループ全体のエコシステムに繋いでいくというスタイルに転換されたそうです。

 

「理念は浸透させること自体が目的なのではなく、事業拡大のために活用できるツールであり、共通言語」と話す日髙氏は、楽天ピープル&カルチャーラボにて、アプリやボードゲームを使った理念浸透研修、グローバルリーダーたちの育成研修等、幅広く企画されています。

 

ケニー小川氏 :Dow Pacific, President

 

次に、世界最大級の米国化学メーカー「ダウ」のアジアパシフィック社長、ケニー小川氏にご登壇いただき、アメリカ企業の日本人トップ経営者としての目線から、ダウ流の人材開発のポイントについて、お話いただきました。

 

ダウは、世界31か国、113の製造拠点を持つ巨大企業で、122年の歴史を持ちながら、今なお成長を続けている企業のひとつ。

 

人材マネジメントの柱としては、①パフォーマンスマネジメントと、②リーダーの早期選別とリーダーシップ・デベロップメント・プログラムの実施、そして③現地化の促進、④人材の流動化の促進が挙げられ、個人のキャリア・プランを練りながら、早い段階で大きな仕事を任せ、将来の伸びしろを図るのだと言います。

 

国籍・年齢・性別関係なく、パフォーマンスを出した者が正当に評価されるという、徹底した成果主義の採用は、日系企業との違いとして顕著な例ではないでしょうか。

 

小原佳子氏 :GE Singapore, HR Manager, HR Business Partner

 

各社プレゼンテーションの最後には、GE(ゼネラル・エレクトリック)の航空機リース・ファイナンス事業部にて、世界中のコマーシャル部門の人事戦略を担当されている、小原佳子人事マネジャーにご登壇いただきました。

 

GEは人事評価制度の世界基準ともなった「9ブロック」を2016年に廃止し、レイティング(ラベル付け)による評価を止め、「パフォーマンス・デベロップメント(PD)」と呼ばれる新たな人事制度にシフトしました。

 

その背景は、「そもそも何のために人事評価をするのか?」という本質に立ち返り、社員の能力とモチベーションを引き出すことが目的であるならば、年に1~2回の形式的なレビューとレイティングで、社員にラベル付けをするよりも、上司と部下が常に継続的な対話を重ね、リアルタイムに近い形でフィードバックを行う方が、効果が高いと考えられたからでした。

 

ノーレイティングの導入に関しては、会場の参加者からの関心も高く、「ノーレイティング導入に伴うマネジャーへの業務負荷や、導入後の社員の変化について」等、多くの質問が寄せられ、続くパネルディスカッションでもトピックとして取り上げられました。

 

パネルディスカッション&質疑応答
『アジアにおけるこれからの強い日系企業とは』

 

後半のパネルティスカッションでは、弊社代表の森田英一によるファシリテーションのもと、「これからの日系企業がグローバル市場でのプレゼンスを維持・向上するには?」といったテーマでの活発な議論が交わされました。

 

人と組織のグローバル化が加速する時代において、「日本型理念経営は世界に通用するのか?」という問い立てに対し、京セラアジアパシフィックの溝端氏は、「これまではプロダクト・アウトで販路・生産を拡大してきたため、日本の考え方が通用した」と主張。一方、今後マーケット・インのアプローチを取る上では通用しなくなると予測し、核となる理念は残しつつ、柔軟に変えるべき部分の見極めが必要との見方を示しました。

 

また楽天アジアの日髙氏は、「ビジネスの進化と時代に応じて、変えるべきところは変えてよいものとする風土が社内にある」と指摘。GEの小原氏も、「マーケットや戦略が新しくなれば、求める人物像も変わる。変化することへのハードルは良い意味で低い」との回答。

 

ダウの小川氏は、「アメリカ企業はステークホルダー全体をみて、顧客、従業員、コミュニティだけではなく、投資家を納得させることができる理念を掲げます。日本企業のリーダーたちに足りないものがあるとすれば、その理念を実際に企業に変革を起こすためのツールとして使い、リーダーが『顔を見せていく』姿勢かもしれない」と語りました。

 

ただ額縁に入れておくために理念を策定するのではなく、肝になるのは「変革ツールとして活用できるもの」にドライブさせること。

 

 

また、「優秀な人材の採用とリテンション」については、ダウの小川氏が「日系企業は給与が安すぎる。優秀な人は対価を求めるが、日系企業は欧米企業に比べ半分から3分の2程度しか給与を出していない」と指摘。同時に、キャリアパスに関する対話もできていないとした上で、「社員のモチベーションを維持し、市場よりも少し良い給与を出すことが大切」と熱く語りました。

 

このほか、「日系企業の駐在員システム」に関する是非とキャリア意識のギャップ、「現地化における人材配置の課題」「グローバル人事制度の潮流(ノーレイティング制度を既に取り入れている会社の事例)」など、登壇者自身のリアルな実体験を交えた本音のディスカッションが展開され、会場の方々も深く頷く場面が多々見られました。

 

「どのようにローカルマネジャーを育てるか?」という育成面のテーマでは、リーダーシップ・パイプラインという体系的な人材育成の考え方を紹介するとともに、人材配置の転換点を見極め、リーダーを抜擢して任せていくことの大切さについて議論が交わされました。

 

 

最後に、メインテーマであった「アジアにおけるこれからの強い日系企業とは?」との問いに対しては、他国にはない日本の強みを活かしつつも、日本の常識を押し付けない姿勢、そして現地市場の価値観やニーズから学び、ブリッジを架け、共にシナジーを創り出そうとする「共創(Co-Creation)」のマインドと仕組みをもった企業ではないか、という意見があがりました。

 

これからの時代を担う日本のリーダーたちは、グローバル市場でいかに「勝てるか」というよりも、いかに「共に創るか」という意識への転換が求められているのかもしれません。

 

参加者からは、「他ではなかなか聴けない刺激的な内容でした」「駐在員としての我が身のミッションを再考する良い機会になった」「日系企業と欧米企業の比較と具体的事例が面白かった」「明日からのオフィスでのコミュニケーションの実践に早速活かしていきたい」といった前向きな感想が多く寄せられました。

 

次回、第2回HRフォーラムシンガポールは、2020年7月に予定しております。次回開催も乞うご期待!

 

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